恋は雨上がりのように最新第76話の感想(ネタバレ含む)と考察。近藤があきらのクラスメートだったら……。現実的なシミュレーションが近藤の想いをクリアにしていく。

恋は雨上がりのように第75話 あきら
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第76話

第75話のおさらい

コーヒーを用意するために台所立つ近藤。

 

その脳裏には美しい雪女に扮したあきらが美しい反物を近藤に手渡し、あきらはその見返りを求める。
恋は雨上がりのように第75話 近藤とあきら

 

近藤はそれに見合うものは持っていないと答え、あきらはその代わりとして近藤の心を奪おうと言う。

 

そこまで考えて現実に戻り、コーヒーを淹れる為にお湯を沸かす。

 

こたつで待つあきらは傍らに原稿用紙を発見する。

 

近藤がコーヒーを持って部屋に戻ると、あきらが不自然に姿勢を正して座っている。

 

近藤があきらの斜向かいに座ると、あきらは近藤に、小説を書いているのかと問いかける。

 

口に含んだコーヒーを吹きだし、咳こむ近藤。
出しっぱなしだった原稿をあきらが発見したのだと理解し、最近また書き始めたと素直に答える。

 

あきらは、ここ最近ずっと書いていたのかと問い直し、肯定する近藤の様子から最近楽しそうにしていたのは小説を書いていたからだと知る。

 

正月休みの間もずっと書いていようと決めていたという近藤に、あきらはそんな時に訪ねてしまったことを謝罪する。

 

近藤は、一息ついたところだから大丈夫とフォローする。

 

近藤が、よくこんな日に訪ねて来たと話題を変えると、あきらはふと、部屋を見回す。

 

テレビが無いと感じ、実際、テレビが無いとへらっと答えた近藤に軽く衝撃を受けるあきら。

 

普段はラジオを聞いているが前日のガーデンでの打ち上げの際に使ったラジオは忘れてきてしまったので、今日のような静かな雪の日は世界に自分以外誰もいないような気分になると近藤は静かに語る。

 

「世界に自分だけ…」

 

「そう、僕らだけ。」
目を閉じた近藤があきらの言葉に続く。
恋は雨上がりのように第75話 近藤
あきらも近藤に倣って目を閉じる。

 

部屋に静寂が満ち、二人を包み込む。

 

あきらが雪の日はなぜ静かなのかと呟く。

 

近藤は雪が音を吸収するからだと答える。

 

そして近藤はあきらがコーヒーに口をつけていないことに気付き、あきらがブラックが苦手だということを思い出す。

 

雪の日の特別バージョンだと窓を開ける。

 

外に手を伸ばし、つかまえた! と雪を掴むような真似をしてあきらに近寄る近藤。

 

その握った手を開くとそこには包装紙に包まれた角砂糖がある。
恋は雨上がりのように第75話 あきら
笑顔で礼を言うあきらに近藤は一瞬見惚れる。

 

窓を閉める近藤の脳裏には、ある想いが生じていた。

 

前回75話の詳細は以下をクリックしてくださいね。

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第76話

学校。チャイムが鳴る。

 

「近藤。」
机に座って文庫本を読んでいた近藤に声がかかる。

 

近藤が呼ばれた方を見ると、そこにはあきらが立っている。

 

これ、と近藤に向けてあきらが一枚の写真を差し出す。

 

ぼけっとあきらの顔を見ている近藤にイラついたように、これ、と近藤を睨むあきら。

 

「あっ ごめん!」
はっとして写真を受け取る近藤。

 

あきらは、大会の写真はこれでいいのかと確認する。

 

うん、と肯定し、近藤は写真を受け取り、写真の中で陸上のユニフォームを着て走るあきらを見ながら、バッチリ、と目を見張る。
「ありがとう!」

 

あきらは、それじゃ、とさっさと近藤の元から去っていく。

 

近藤は、その後ろ姿をじっと見つめる。


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あきらを目で追う近藤

下校のチャイムが鳴る。

 

近藤は図書室で学生新聞の原稿に向かっている。

 

窓の外からピピーッ、と笛の音が鳴る。

 

グラウンドでは女子陸上部が練習をしている。
はるかはタイムを測ろうと他の部員を促し、あきらはクラウチングの体勢からピッ、という笛の音に合わせてスタートダッシュを決める。

 

近藤は図書室の窓際からその光景をじっと見つめている。

 

朝。

 

近藤はバッグを背中に背負ってズボンのポケットに手を入れ前傾姿勢になって登校している。
あくびをすると、近藤の耳に、あきらおはよー! と言う声が聴こえる。

 

その方向を何気なく見ると、あきらに向かって、笑顔のはるかが小走りに近寄っていくところだった。

 

雨が降りそうじゃない? とはるかに問いかけるあきら。

 

放課後までもちそうじゃない? と返すはるか。

 

近藤は歩きながら、後ろのあきらとはるかの会話を気にしている。

 

国語の楠先生が教壇でテストの返却を行っている。

 

近藤が呼ばれ、今回も頑張ったな、と褒められる。

 

橘、と楠に呼ばれて立ち上がるあきら。

 

教壇に向かうあきらと教壇から自分の席に戻る近藤が狭い通路をすれ違う。

 

すれ違う瞬間、あきらの視線は教壇にあるが、近藤はすぐ近くに迫ったあきらの横顔を見ている。

 

すれ違った後も、教壇に向かうあきらの存在を背後に感じる近藤。

 

「赤点とったヤツはレポート提出するように!」

 

楠先生の言葉に、教壇で自分のテスト用紙を見ているあきらの顔が曇る。

 

食堂。

 

学生たちで賑わっている。

 

あきらがはるかや他の女友達と一緒にご飯を食べている。

 

近藤は一人うどんをすすり、あきらの方へ視線を投げる。

 

あきらは友達との会話で楽しそうに笑っている。

 

さっさとうどんを食べ終えた近藤は楽しそうなあきら達をよそに一人食器を片付けに席を立つ。

 

下校のチャイムが鳴る。


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雨の日、図書室で

図書室。

 

窓に強めの雨が当たっている。

 

近藤は学生新聞の原稿と格闘していた。

 

近藤は、ふと、あきらから受け取った写真を手に取り見つめる。

 

ぼうっと写真を見つめていると、近藤? と声がかかる。

 

近藤が、はっ、として声のした方を見ると、あきらが近藤を見つめている。

 

「あ…!」
慌てた様子で立ち上がる近藤。
「橘!?」

 

「何してんの?」
なんで立つの? と続けながらあきらが近藤の向かいの席の椅子に手をかける。

 

近藤は、新聞の記事を…、と呆けた様子で答える。
「俺、新聞委員だから…」

 

あきらは近藤の向かいの席に座りながら、新聞? と近藤の原稿に視線を移す。

 

新聞の原稿には「陸上部 橘あきら選手 新記録!!」という見出しがある。

 

それを見て、あきらは近藤に渡した写真の用途を理解する。
「あー…大会の写真ってこれに使うんだ。」

 

近藤は、そうだよ、そう言ったと思うけど…、とぎこちなく笑みを浮かべる。

 

「ていうか学生新聞なんかあったんだ。」
原稿を手に取りズバッと言い放つあきら。

 

近藤はあきらの言葉に内心ショックを受けつつ、一応、月に二回発行してるよ、と答える。

 

「た、橘は何しに図書館に来たの? 珍しいよな…」
近藤があきらに問いかける。

 

「あたしは…雨で部活もないし…」
あきらは淡々と答える。
「現国のレポート書きに…」

 

「えっ!?」
近藤が目を丸くする。
「橘テスト赤点だったの!?」

 

「……」
あきらは怒りを秘めた表情で近藤をじっと見つめる。

 

あきらのじとーっ、と見つめて来る視線に気づき、あっ、と声を上げる近藤。
「すみません…」


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雨がやんでしまったら

あきらが原稿内の何かに気付く。
「この、近藤小劇場って近藤が書いてるの?」

 

近藤は若干慌てつつも、うん、と肯定する。
「ショートストーリーを連載してるんだ。」
指で鼻をこすりながら少し恥ずかしそうに近藤が答える。
「くだらない内容が多いけど…」

 

あきらは、フーン…、とだけ言って近藤の書いた文を読む。

 

近藤は、あきらが自分の文を読んでどんな反応をするのか、胸を高鳴らせてその表情を見つめている。

 

「……」
あきらが口を開く。
「ハイ。」
その後に特に言葉が続く事なく、原稿を近藤に手渡す。

 

感想無しだったことにがっかりしつつも、いいんだ、うん、いいんだ、と自分を慰める近藤。

 

「図書室って…静かなんだね。」
近藤の様子を何も意に介することなく、あきらが呟く。

 

図書室はまばらに生徒がいて、勉強や読書をしている。

 

近藤は、そりゃ、まぁ、と答え、今日は雨で人が多い方だと続ける。
「いつもは居ない橘だってこうやって…」
近藤が笑顔であきらに視線を向ける。

 

「雨、」
あきらはぼうっと中空を見るともなく見つめながら、左手で軽く頬杖を付くような姿勢で呟く。
「はやくやまないかなァ…」

 

近藤はあきらを見つめていた視線を原稿に移す。
「うん…そうだね。」
原稿にシャープペンで字を書いていく。

 

近藤は考えていた。

 

あきらは雨がやむことを願う。

 

しかし自分はそうは思っていない。

 

(だって、雨がやんでしまったら……。)

 

原稿に向かう近藤。
視線は原稿にあるが、意識の所在は、目の前で頬杖を付いて中空を見つめているあきらにある。

 

二人の間に流れる静寂。そして図書室に響く雨の音。

 

(雨がやんでしまったら…。)


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自覚

ブシュシューッと言う音で、近藤は現実に意識が戻る。

 

暖房器具の加湿の水が切れたのに気づいた近藤は台所でやかんに水を入れている。

 

やかんに水が満たされていく僅かな時間。
ぼうっと水を見つめる近藤の脳裏には、先ほどのあきらとの学生生活の妄想の余韻と、ある実感がよぎっていた。

 

(もし、俺と橘さんが同級生だったとしたら会話すらままならない関係だったかもしれないな。)

 

(そう思うと…)

 

「店長。」
ぼーっとやかんを見つめる近藤に背中からあきらの声がかかる。
「あの、お手洗い借りていいですか?」
近藤の背後には、あきらがかしこまった様子で立っている。

 

あそこのドア、と笑顔でトイレの方向を指さす近藤。

 

あきらがトイレのドアを閉めるのを見届け、近藤は水の入ったヤカンを居間に持って行く。

 

近藤は、ふと、あきらのコートが床に置かれたあきらの鞄の上にかけられているのに気付き、コートを手に取って壁際のハンガーに掛ける。

 

既にハンガーにかかっている自分のコートと、その隣にたった今近藤がハンガーに掛けたあきらのコートが並ぶ。

 

その光景を、近藤は腕を組んで見つめる。

 

そして、先刻、あきらから受け取ったマフラーの入った紙袋の中に一緒に入っていた「店長へ」と書かれた封筒を手に取り、頬を染めて見つめる。

 

(人生というのはよくわからないものだな。)


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感想

近藤さん、かなり煮詰まってきてますね(笑)。

 

この物語が始まった当初は、あきらとの歳の差からカップルとしての釣り合い、そして何より世間の常識に照らしてあきらと付き合うなんて、近藤にはとても考えられなかった。

 

しかし今や、あきらとの出会いのタイミングが実は自分にとってはとても良かったのではないか、という感慨を抱くまでになっているとは……。

 

これは近藤からあきらに対しての告白展開あるかも……。

 

そうなったら付き合っちゃうんじゃないの? これ。

 

あきらがリハビリと陸上に専念するためにバイトを辞めるという話をしに来ただけであり、もうあきらの心の内で近藤への想いは整理しました、という線も無いとは言えないけど……(笑)。

 

近藤の変化は、やはり、あきらの事が好きなんだ、と自覚した時点を境に起こったんだと思う。

 

一度、自分は〇〇の事を好きなんだ、と思うと、恋愛感情はそこからぐんぐん膨らむ。

 

あきらの事が好きだと自覚した後の近藤は、むしろあきらを避けるように意識して行動する時期もあった。

 

それは、これ以上あきらの事を好きにならないように、苦しくならないように、という自己防衛の為だ。

 

自分は45歳。あきらは17歳。
このいかんともしがたく、厳然と存在する年齢差という常識が近藤の思考と行動を縛っていた。
いや、近藤はむしろそれを武器にあきらへの好意と戦っていたと言って良いかもしれない。

 

しかしもう、かなりその抵抗は弱まってきているように感じる。


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今の近藤は、静かに自分の気持ちを受け入れ、整理する。そんな作業をしているように見える。

 

あきらを部屋に入れた時に感じた、もうあきらと会えないかもしれない、という予感が近藤の恋愛感情を増幅している。
理性が弱まったのではなく、あきらを求める力が強くなっている。

 

あきらを失ってしまうかもしれない、という危機感が近藤をそうさせているのではないかと思う。

 

今回の近藤の学生時代のシミュレーションは、もし高校時代の自分の立ち位置であきらのクラスメートとして自分が存在していたとしたら、という、これまで押し殺して来た、言わば妄想だっただろう。

 

そして、シミュレーションの結果は、学生同士だったならまず相手にされなかっただろうという結論に至った。

 

楽観も甘さも全くない。どこまでもシビアな結果。

 

そして得られた結果から、そもそも自分があきらから好かれているという、言ってみれば僥倖と言うよりほかない状況がどれだけ恵まれたものなのかを、近藤は強く自覚したことだろう。

 

あきらが好きになってくれたのは今の自分だから。
学生時代だったらまずあり得なかった。

 

この結論は近藤を告白に駆り立てるのか。

 

告白したとして、それでも付き合えない、となるのか。

 

静かな展開が続いているが、近く、第25話以来の衝撃が来るはずだ……。

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第25話あきらと近藤に気まずい空気が生じた翌日、台風の中、近藤の部屋を訪ねたあきら。突然のあきらの来訪に驚きつつも、部屋に招き入れた近藤の二人の会話が始まる。...

 

目が離せない。

 

以上、恋は雨上がりのように第76話のネタバレを含む感想と考察でした。

次回、第77話は下記リンクをクリックしてくださいね。

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