第25話
あきらと近藤に気まずい空気が生じた翌日、台風の中、近藤の部屋を訪ねたあきら。突然のあきらの来訪に驚きつつも、部屋に招き入れた近藤の二人の会話が始まる。
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じっとテーブルに伏せているあきら
「すごい雨…」近藤が窓の外を見る。
背後に視線をやるとそこにはテーブルに顔を拭ているあきら。
近藤はカーテンを閉めてあきらの背後を歩き、少し離れたところにあぐらをかく。
あきらはテーブルに顔を伏せたまま動かない。
「…お店で、何かあった…?」近藤があきらに静かに聞く。
あきらは顔をテーブルに伏せたまま違う、とかぶりを振る。
その様子を見ている近藤。
「橘さんは、いつも雨の日に突然現れるね。」近藤はあきらを見ず、目を伏せる。
二人の沈黙に風と窓の鳴る音が重なる。
「……」
近藤がケホ、と微かにセキをする。
「…あたしは、」
顔を伏せたまま、あきらが静かに語り出す。
「あたしは、店長のこと何も知りません。」
(『君が俺の何を知っているの』)
あきらの一言に、近藤は昨日の自分があきらに投げかけていた言葉を思い出す。
(あ…)
「だから、知りたいです…」
やはりずっと顔を伏せたままのあきら。
「店長のこと…あたし…」
「ごめん…」
近藤は、くしゃ、と自らの頭を掴む。
「あんな言い方をしてしまって…」
「だけど本当に俺は大した人間じゃないんだ。」
「何をやっても中途半端で、人に誇れることなんて何ひとつない。」
「橘さんが思うような大人じゃないんだよ。」
「……」あきらが顔を伏せたまま話し出す。
「店長は、すてきです…。」
近藤は、はははっ、と頭をかきつつ笑う。
「俺からしたら橘さんの方がはるかに素敵だよ。」
「若くて希望に満ちあふれてて。」
「キラキラ輝いてる!」
「……」じっと近藤の話を聞いているあきら。再び話し出す。
「じゃあ…」
「どうしてこんなに胸がちぎれそうなの?」
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あきらの想いの強さに圧倒される近藤
「若さっていうのは時に乱暴で狂暴なものなんだ。」
「それでも、その時に感じた感情というのは、いずれかけがえのない財産になる。」
「今はわからなくても…」
「…あたしが、」あきらが近藤に問う。
「店長を好きなのは迷惑ですか…?」
「あたしではダメですか…?」
「ダッ…」慌てて否定する近藤。
「ダメなわけないじゃないか!!」
「橘さんは誰から見たって素敵にちがいないよ!!」
近藤が顔を伏せたままのあきらに一生懸命に言葉をかける。
「ダメなんてことは決してない!!」
「俺は…」突然電気が消える。
「!?」
「停電…」
部屋を暗闇が満たす。
強い風と風が鳴らす窓、そして雨の音が聞こえる。
「…橘さんといると、」近藤が静かに話し出す。
「忘れていたその、かえがえのない財産ってヤツを、思い出すことが出来るよ。」
「迷惑なんかじゃない。むしろ、感謝しているんだ…」
近藤が顔を上げる。
雷が落ち、部屋を一瞬明るく照らし出す。
あきらが起き上がり、近藤をじっと見ていた。
近藤の言葉を受けて、あきらの目から涙がこぼれてゆく。
「……った。」
あきらは泣きながら小さな声で絞り出す。
「よかったぁ…」
安心して泣く様子を見た近藤は立ち上がり、あきらの元へと歩いていく。
近寄って両手を差し出している近藤の気配に気付くあきら。
近藤があきらを抱きしめる。
『この感情を恋と呼ぶにはあまりに軽薄だ。』
うーん。全く感想を挟めない。
結果的に、昨日の突き放したような近藤の言葉が二人の距離を縮める布石になっている。
これもあきらが積極的に近藤を追い求めた結果だろう。
そして近藤は確実に以前よりもあきらのことが好きになってしまったと思う。
こんな流れで泣かれたらほっとけるわけがない。
以上、恋は雨上がりのように25話のネタバレ感想と考察でした。
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