第52話
![あきら](https://xn--p8jl8gkd6mma8251dul8ave4h.biz/wp-content/uploads/2016/12/53_02.png)
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はるかに絡む倉田みずき
「風見沢高校女子陸上部新キャプ、喜屋武はるかです」
一礼するはるか。
「本日は合同練習よろしくお願いします!」
っしまーす!!
「南高の新キャプ柿田です」
はるかが握手を求められる。
「よろしくね」
「よろしく」笑顔で返す。
何かに気づくはるか。
近づいてくる不敵な目をした女の子。
「一年の倉田みずきです」
みずきの放つ圧ではるか、思わずのけぞる。
みずきは強い子なんだよな。
アキレス腱を切ったけど復帰して、以前より速くなった。
あきらに出来ないはずないと思っている。
![はるかとみずき](https://xn--p8jl8gkd6mma8251dul8ave4h.biz/wp-content/uploads/2016/12/53_00-300x191.png)
「今日は橘先輩はいらっしゃらないんですか?」
みずきがキッとはるかをまっすぐ見ながら続ける。
「陸上やめられたんですか?」
気圧されて口をつぐむはるか。
(偶然知り合ったの……)
あきらの顔を思い出す。
「あ……」
「別にっ」
はるかの背後から後輩が顔を出す。
「橘先輩陸上やめるって言ったわけじゃないよ! ね! キャン先輩」
「え、あ…うん」
「じゃあどうして…」
食い下がるみずき。
あきらと戦いたいというより、まずは憧れのあきらの勇姿を見たいんだろう。
敵意より尊敬が先立っての態度に思える。
遠くから呼ぶ声。
「誰ですか?」と後輩。
「…弟」
南高中等部、と続けるはるか。
ポケットを探る。
「ハイ家のカギ」カギを渡すはるか。
「あれだけ忘れるなって言ったのに」
「母さん今日は同窓会だから」
「人は忘れる生き物なのだよ」「ありがたう」
眼鏡をクイと上げる弟。
「ん?」はるかの背後のみずきに気づく。
にらむはるか。
「ぬおっ」
構える弟。
「あの女陸上部だったのか!」
「どおりであきらちゃんのこと訊いてきたわけだ」
「あっ」みずきが焦る。
「あんたまたちゃんづけで…!」
その様子を見て冷静になるはるか。
「倉田さん、どこであきらと会ったの?」
「たまたま入ったファミレスで橘先輩がバイトしてたんです」
「へー」はるかの背後に隠れながら弟が聞く。
「どこのファミレス?」
「日吉の近くのガーデンっていう所」
「ナニ?」他の部員がざわめく。
「橘先輩のバイト先だって」
あきらのバイト先が後輩にバレた。
これ地味な描写だけどひょっとしたら伏線かも。
もちろん後輩があきらの放つ来て欲しくないという空気を読んで何も起こらないかもしれないけど。
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スターターピストルを手に持った女の子が声をかける。
「ハイッ!」素直に返事するみずき。
「石井、走っといでよ」石井に声をかけるはるか。
「はいっ」上着を脱ぐ石井。
みずきがスタート位置につく。
クラウチングスタートの構えをとる。
パァン
スターターピストルの音と共に飛び出すみずき。
他の選手より遥かに速く反応する。
大分、他の選手より反応が早いみずき。
優れた能力を有していることがわかる。
はるかの背後で後輩が会話している。
「橘先輩とどっちが速いんだろ」
「えーーー橘先輩のが速いよーーー」
「ていうか南高のタータンいーなー」
※タータン…トラックに貼られているゴム(ポリウレタン)
(…………)何かを想うはるか。
みずきは明らかに実力が頭一つ抜けた存在のようだ。
だからこそ、そこまでになれた自分に出来てあきらに出来ないことはないと思っているんだろう。
みずきの気持ちになったらあきらの事を惜しいと思うのは当然。
一人沈むはるか
「今日はありがとうございましたーーーッ!」
あっしたー
競技場に集まった一同が礼をする。
「よ~~~し この後 先生がメシおごってやるゾ」
やったー!!と喜ぶ生徒たち。
「給料日前だけどな」
「おなかすいたー」
「ねー」
(……)騒いでいる様子を見つめるみずき。
青春だなぁ。
みずきは何を思うのか。
「あたし中華丼とシューマイ~」
「あたし天津飯とエビチリーー」
「杏仁食べる人ーーー」
「はぁーーーい」
「レタスチャーハンと春巻とホイコーロー」
「フカヒレあんかけと―――」
「お前らちったあえんりょしろ!!」と先生。
「いーじゃーん」
「倉田さん、調子良さそうでしたね」
石井がはるかに話しかける。
「彼女もあきらと同じアキレス腱のケガしてたんだっけ」と、はるか。
「ケガの前は正直タイムもパッとしない選手だったんですけど、」
石井が続ける。
「復帰後ぐんぐん伸びてるんですよ」
(……)はるかの様子を見る石井。
「なんか、橘先輩がこのまま走らなくなっちゃうの…」
「悔しいです…」
やっぱり勿体ないと思うよなぁ。
あきらは余程飛び抜けた存在だったことを思わせる。
「なんて、余計なお世話ですよね」
「橘先輩が走りたくないんだから仕方ないし…」
頭に手をやって笑顔を見せる石井。
笑顔を返すはるか。
「あたしドリンクとってきます! 先輩は!?」
立ち上がる石井。
「あとで行く。ありがとう」
石井が行くと、再び物思いに耽るはるか。
はるかは辛いね。あきらとの付き合いが長いだけに。
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はるかが、あきらが陸上を好きだと信じる理由
(そんなはずない。だってあきらは、)
(あきらは…)
はるかの回想。
「あきらぁ~~待ってぇ~~!」
振り返る汗みずくの幼いあきら。
「おねーちゃんまってよぉぉ」はるかの弟。
「はぁはぁ」息も切れ切れのはるか。
膝に手をついて肩で息をするはるか。
「も~~~! 速いってばぁっ!」
「ごめん…」
「なんでいっつもどんどん走ってっちゃうの!?」
「え」きょとんとするあきら。
「だって…気持ちいいんだもん」
あきらを見上げるはるか。
「走ってると耳が風の音でいっぱいになって、」
空を見上げるあきら。
「空にとけてるみたいになる」
あきらの様子に見惚れて顔が赤くなるはるか。
「ま―――…わかるけど…あたしも走るの好きだし」
あきらが視線を空からはるかに移す。
そして満面の笑顔。
![笑顔のあきら](https://xn--p8jl8gkd6mma8251dul8ave4h.biz/wp-content/uploads/2016/12/53_03.png)
めちゃくちゃ良い笑顔。
こんな笑顔をするあきらが走ることを嫌いになるはずないとそりゃあ思うよ。
「あっ転んだ」背後で転んでいる弟。
「お”ね”ーち”ゃーん」泣く。
「はいはい」
回想終了。
騒ぐ周りから取り残されたように物思いに耽り続けるはるか。
場面転換。ガーデン。
ゴミ袋を縛るあきら。
「ゴミ捨てに行ってきます」
外のダストボックスに入れて事務所に戻ろうとすると、強く吹く風。ふと空を見上げる。
息を吐き、音に耳をすすませる。
両手でより良く音を聞くように耳に手を当てる。
![耳に手を当てるあきら](https://xn--p8jl8gkd6mma8251dul8ave4h.biz/wp-content/uploads/2016/12/53_04-213x300.png)
やはりあきらの心の底には陸上、というより走ることへの想いが強く有り続けていることがわかる。
お母さんもあきらがスパイクを捨てておいてと言った時に即食い下がったし、昔からあきらの近くにいた人は皆あきらと走ることが不可分だということを感じていたんだと思う。
「橘さーん!」
「はいっ」呼ばれて目を開く。
恋物語は一旦鳴りを潜め、あきらの成長物語へとストーリーは進路転換した。
物語はどう収束していくのだろう。
以上、恋は雨上がりのように53話のネタバレ感想と考察でした。
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