第23話
あきらは、近藤のガラケーでも自分のスマホとメッセやメールでやりとりできることを知り、店長からメールアドレスを聞こうと奮起する。
事務所で二人きりになって近藤からメールアドレスを聞こうとするが中々聞けないあきらは話題を図書館で借りた本の感想にそらしていく。
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ガラケーとスマホでもメールはできる
リビングのソファに仰向けに寝転がって図書館から借りてきた坊っちゃんを呼んでいるあきら。
天気予報を見てやーねー、と母が一言。明日バイトでしょ? とあきらに問う。
あきらは母にん――、と生返事してリビングから自室に行く。
机の上に置かれた写真集の表紙を見つめる。
机から紙が落ちる。拾ったのははるかからもらったガチャガチャにキーホルダーと一緒に入っていたメモ。
しゃがみこんでメモを見つめるあきら。
場面転換。ガーデン。
オーダーを読み上げるあきら。
久保、吉澤、ユイは輪になって会話している。
ユイの友達のバイト先ではシフトのやりとりを店長公認のメッセグループで行っているという。
少し離れた場所で会話を聞いていたあきらは近藤がガラケーだとから無理だよね、といった風情の表情を浮かべている。
久保とユイもそれに気づいてしらけた顔になる。
吉澤がガラケーの母ともメッセしてる、ガラケーでもできると得意げに言う。
その一言にあきらが反応する。
「そーなの!?」
ユイと吉澤が急に会話に加わって来たあきらを見る。
恥ずかしそうなあきら。
「や、あったら便利だなって…」グループメッセ…、とあきらは話題に食いついた言い訳をする。
ユイは特に不審に思った様子もなく「んね!」とあきらに笑顔を向ける。
ガラケーとスマホはメールだって出来るよ、と吉澤は情報を補足する。
その情報にも「!!」と、さらに反応するあきら。
あきらに限らず、女性は電子機器で意外に基本的なことを知らないことが少なくない。
「店長とメッセなんて勘弁してくれよ。うぜー。」
「それに、あの店長がメッセを使いこなせるとはおもえねーし。」
・・・・・。
加瀬の一言に誰も反論できない。
このハナシナシナシ~、と会話の輪が一斉に解散する。
吉澤があきらからIDを聞くチャンスを逃す。
近藤はどれだけ機械音痴だと思われてるんだ。従業員に舐められすぎで可哀想(笑)。
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近藤のメールアドレスを知りたいあきら
しかしあきらは一人頬を紅潮させ、テンションが上がったままトイレ掃除に。
あきらは、トイレの鏡を見ながらさっき手に入れた情報を思い出す。
(ガラケーとスマホでも、メールできる! メッセもできる…!)
(メッセは、店長よくわからなそうだから…メール…)
あきらはエプロンのポケットに入れていたはるかからもらったキーホルダーを出す。
(『これ持ってると好きな人と仲良くなれるんだよ!』)
暫く見つめてから口元を引き締め、キーホルダーをぎゅっと握りしめる。
勝負の時だなぁ。もう既に一度告白してるけど、こういう手順も新鮮。

レビューが147件もついており、星は5つ中4つを獲得している。
近藤は無表情で画面を見つめながらマウスを操作する。
そこに頬を紅潮させ、若干気合の入っているあきらがサンドイッチを持って「おつかれさまです!」と入室する。
「あ、おつかれ!」あきらに振り返り、近藤は笑顔を返しながらマウスを操作してamezonのウィンドウを消す。
事務所にカタカタ、と近藤のキーボード入力の音だけが響く。
あきらはドキドキしながらメールアドレスの聞き方をずっと考えていた。
(「メールしませんか?」…ちょっとおかしいかな。)
(「メールしてもいですか?」)
(…よし!)
「て、店長!」
あきらは意を決して近藤に話しかける。
「ん?」キーボード入力を止めて、近藤が振り向く。
「あ、あのっ、メ、メ―――ッ、」一生懸命言おうとするあきら。
「め――――…」
店長の不思議そうな顔。あきらの言葉の語尾が小さくなっていく。
言葉が止まってしまったあきら。
「『坊っちゃん』…面白いです…」
図書館で借りた本の感想を報告する方向に会話の行先を持っていくことに。
こうなってしまうよね。本当に好きな人相手だと。
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気持ちのギャップ
近藤はギッ、とイスを鳴らしてPC画面に向き直る。
「漱石の文体は口語体だから、時代を問わず読みやすいんだ。」
店長がこっちを見てくれなくなってちょっと残念に思っているのか、あきらの言葉が続かない。
「あ、あの…」
仕切りなおしてまたメールアドレスを聞こうとしているのか、あきらが再び声をかける。
「うん?」近藤はキーボードをたたきながらあきらに振り向かずに答える。
さっきはこっちを見てくれたのに。さっきより悪くなってしまった近藤の反応にあきらはアドレス教えてくださいと切り出せない。
「店長が借りた本は…面白かった ですか?」
今度は近藤が借りた本の感想を聞く方向に逃げるあきら。
「……」近藤はPC画面を見たまま、一瞬の沈黙のあと、うん、と身体を後ろに逸らし、イスをギ、と鳴らして答える。
「どんな本なんですか?」
「や、フツーの…純文学…」
近藤は歯切れ悪くそれだけ言って、しばらく言葉が止まってしまうが、
「知り合いが書いた本なんだ。」
と言葉を続ける。
いつもの近藤なら純文学の話題ならばもっとするする会話できていたはず。
何かがおかしいのは知り合いが書いていたから。
それを聞いてあきらは素直に感心する。
「店長のお友達ってことですか!?」
「…うん、まぁ…」近藤はあきらに振り返らない。
「え――――っ すごい!」
頬を紅潮させて素直な反応を示すあきら。
「友達にそんな人がいるなんてっっ!」
「ハハ…」近藤はPC画面に向いたまま、カタカタとキーボードの打鍵を再開しながら薄く笑う。
「店長って…すごいです。」あきらはテーブルを見つめている。
「すごいのは本を書いた友人だよ。」
近藤はハハハ…と笑いながらキーボードを打つ。
「俺は何もしちゃいないさ。」
「ただのオジサンです。」近藤は片方の口角を上げて自嘲している。
「でも、本たくさん読んでるし…」近藤の様子には一切気づかず本当にすごいと思っていることを伝えるあきら。
「ハハハ。本読んでるヤツなんてこの世にごまんといるよ。」
この話題が進むにつれてキーボードの打鍵音が徐々に多くなっている。
そもそも近藤があきらに顔を向けないことから、全ての近藤の行動がこの話題を切り上げたいという意思の表れだと思う。
でもあきらは全く気付いていないんだよなぁ。
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「店長だって…」
あきらは近藤の書斎や、机に積まれた原稿用紙を思い出している。
その光景は明るく、ペンに陽光が反射している。
「店長だって…」
カタ、と近藤の打鍵が止まる。
「君が俺の何を知っているの。」
近藤から発せられた初めてと言っても良い冷たい言葉。
さすがにあきらも近藤の何か大事な触れられたくないものに無遠慮に触れてしまっていたことに気づく。
あー辛い。
むき出しのままの素直な心であきらが近藤に一生懸命話しかけていたのに、近藤は冷たくシャットアウトしてしまう。
良かれと思ってしていたことが実は相手にとって迷惑だった、っていう状況は気まずい。

「……」
キッチンに戻ってきた加瀬を見てあれ? と不思議がる吉澤。
「加瀬さんなんでんな所で食ってんスか。」
「別に。」キッチンで、台所にもたれかかってもぐもぐとまかないを食べている加瀬。
なんだかんだ加瀬は出来るヤツだなぁ。
吉澤もせっかく近くにいるんだから見習ったらいいのに……。

雨が降り始めていた。
台風が近づいている。
果たしてあきらの気持ちは近藤に届くのか……。
以上、恋は雨上がりのように23話のネタバレ感想と考察でした。
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