第38話
あきらに誘われた青空古本市で、近藤は学生時代にからよく通っている古本屋のおやじに会う。隣にいるあきらを娘と勘違いされ、ばつの悪い近藤だったが、あきらが友達です、と声を張る。近藤が本に夢中になると何も聞こえなくなることを知ったあきらは、反省する近藤に別に良いと思う、と告げる。
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近藤の通う古本屋のおやじ
「けっこう出店数あるなァ~~。ん?」近藤が何かに気づく。
「おっちゃん!!」
店の中で、開いた本を片手に眼鏡を直している店主がおお! と近藤の姿を見て感嘆の声を上げる。
おっちゃんも出店してたんだ、と親しく話かける近藤に、出稼ぎってヤツよ~! と自らの胸を叩くおじさん。
学生の頃よく通ってた古本屋のおやじさん、今でもたまに行くんだ、と近藤は笑顔であきらにおやじさんを紹介する。
こんにちは…と頭を下げるあきら。
店主は、こんな立派な娘がいたのか、年とるわけだ~、と眼鏡を手で上げながら言う。
近藤は、う”…と言葉に詰まる。
「娘じゃないよ…」答え辛そうな近藤。
「こ」
「友達です!」あきらは近藤が言い終える前に、胸の前で拳を握り、語気強く、声を張る。
一瞬の間のあと、店主は、友達…? フ――――――ン…と怪訝そうな顔で二人を見る。
「ま、まあいいじゃないの!!」近藤は勢いで誤魔化す。
「で! 良い本持ってきたんでショ!?」
もちろん、と店主が即答する。
近藤が恐れているのはこういうことなんだろうな、と改めて思う。
並んでいたら、まず恋人同士とは思われない。親子と思われるのが自然な年の差。
あきらは健気にも、友達です、と言ったけど、それも不自然な印象を与えてしまっている。
あきらは、棚に立てられた古い紙の束から一枚の古ぼけた葉書を取り出す。
それはね、昔の人が実際に出した古葉書、と店主があきらに説明する。
面白いモン置いてるね、と近藤があきらの葉書を覗いている。
古道具屋の友人の委託だよ、と店主。
あきらが葉書の裏を見る。
お手紙拝見。今夜歸ることにした。
だから明日は約束できない。
終
ハハハハ、いい味出してんな――――ッ、と近藤が笑う。
本来は切手マニアとかが古切手目当てに集めたりするらしいんだけど…、と店主が説明する。
「ロマンがあるだろ。時を超えた”人の想い”ってのは。」
まぁ、太宰にゃ同情するがね、恥ずかしい手紙やらラクガキやら、と店主。近藤が確かに、と同意して二人でだはは~、と笑いあう。
近藤と店主の仲が良い。店主と客だけどお互いに認識していて、会話するような関係というのがいい。
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近藤の本に夢中になりすぎるクセ
古葉書を棚に戻したあきらはトイレに行きたくなる。
横に視線を移すと近藤は棚から取り出した本を前のめりになって読んでいる。
「店長、あたしちょっとお手洗いに…」あきらが近藤に呼びかけるも、近藤はじっと本を見たまま反応しない。
その様子をぽかんと眺めるあきら。
だめだめ、と店主からあきらに声がかかる。
「ああなっちゃうと周りの音も声も耳に入らなくなっちまう。」あきれた、という表情の店主。
近藤は本から目を離さない。
すぐに戻ります、と店主に伝えてトイレに行くあきら。伝えておくよ、と言う店主。
没頭できる、集中力があるということ。
ただ、普通一緒にいった女性は放置されていると怒る。
怒らないあきらは近藤の新しい一面を知れたことが嬉しいのだろう。
そういうものって、誰でもあると思うから
このあと3年の追い出し会、という内容のはるかの投稿だった。
あきらは少し考えて、画面をタップする。
あきらは近藤の元に急ぐ。
はるかが誘うつもりだった追い出し会はこの日だったのか。
あきらの表情から複雑な思いがあることがわかる。
近藤は、ごめんっ! とあきらの前で両手を合わせて、つい夢中になってしまって、と言い訳する。
あきらは特に怒ることも不機嫌になる様子もない。
近藤が地面に置いている紙袋を見て「何か良い本買えましたか?」近藤に笑顔で問いかける。
女性にこんな対応されたら申し訳なくなるだろうなぁ。
父親の正志に子供じゃないよ、と言った通り、近藤と一緒にいるときのあきらは大人なところが随分と出ているような気がする。
近藤に子供扱いされないように、大人になろうと背伸びした結果なのかな。
素直で正直なあきらには演じることなんて出来なさそうだからあきら自身が成長しているんだと思う。
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「中々の掘り出し物があってねー。」と至福の笑顔で紙袋を漁る。
「これなんてホラ見て! 貴重な本だよ~」
あきらは近藤をきょとんと見つめている。
「いや~スバラシイ!!」と言ってからはっ、と近藤は我に返る。
あきらはじっ、と無表情で近藤を見つめる。
あ…すみません…とか細い声で謝る近藤。
「やっぱちょっと…問題だよなァ…」ポリ、と口元をかいてあきらから視線を外し、海を見る。
「本のことになると周りのことお構いなしに突っ走っちゃうフシがあって…本当、悪いクセなんだけど…」
「ダメだよなァ…」
「別にいいと思います。」
「そういうものって、誰でもあると思うから。」
二人の間に一瞬の間ができ、ビュウ、と強い風が吹き抜ける。
こんな風にフォローされたら泣く。
古葉書のプレゼント
両手を合わせて頭を下げる近藤。
「一生~~のおねがい!!」
「ずえっっったいに、ダメ。」店主は開いている本から目を離さず拒否する。
「おっちゃん頼むよ、まけてくれよ~~! そんな本俺しか買わねーって!!」
「バッキャロ――――ッ!!」近藤の顔を見て顎を突き出す店主。
「こいつぁ初版本だぞ!!」
あ、と手前の棚を指す店主。
「じゃあそこの古葉書をオマケでつけてやるよ。」
「それでいいだろ!」
エ~~、そもそもソレおっちゃんとこの商品じゃねーじゃんと近藤のテンションが下がる。
近藤のしゃべり方が学生時代に戻ってる。ガーデンでは見せない、近藤の違う一面を見れて良かった。
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暫く考えて、よし買った!! と声を張る近藤。
毎度~、と言う店主に、この商売上手!!、と返す近藤。さらに店主がこの本バカ、と返す。
「橘さん、葉書選んでよ。」近藤があきらに笑いかける。
えっ、というあきらに近藤は、今日のお礼というかお詫びというか、俺ばっか楽しんじゃったからサ、と笑う。
その言葉を受けて、あきらが古い紙の束から選ぶ。
本を買った近藤が、橘さん、いいのあった? と近藤があきらを見る。
あきらは、選んだ一枚の古葉書をコレ…と近藤に渡す。
笑顔で文面を読む近藤。笑顔から神妙な表情になり、微笑を浮かべる。
忘れることのできないものは、
無理に忘れることはないと思います。
季節が巡ったら、
またお会い致しませう。
「いい手紙だね。」
戦利品を手に入れました。
世に一つしかないものだから、いい記念になってだろう。
はるかはスマホを持って、画面をじっと見ている。
センパイに呼ばれて返事するはるか。
女子陸上部の部室のカギを閉める。
追い出し会に出られなかったあきら。
寂しそうなはるかは、いつかあきらとともに救われるのか。
以上、恋は雨上がりのように38話のネタバレ感想と考察でした。
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