第50話
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あきらと母のケンカ
(………)
チンして食べてと書いたメモを添えたラップのかかったオムライスを見つめるあきらの母。
「あきら、入るわよ。」
母、ドアを開ける。
「何、まだ寝てるの? 具合悪いの?」
「あんた昨日の夜何か食べた? オムライスそのままじゃない」
「………いらない。」
あきらは寝床で母に背を向けながら答える。
「今日バイトは? 休みなの?」
「……そう。」
「カーテンくらい開けなさい。もうお昼よ。」
そう言って、母、ドアを閉める。
なんだろう。あきらに元気がない。
何か思い悩んでいるね。これは。
悩むとしたらその対象はそれほど多くない。
近藤か陸上だ。
リビングのドアが開く音に気づく。
「やーっと起きた!」
母、椅子から立ち上がる。
「オムライスあっためる?」
「スープも作ろっか。」
笑顔で鍋を持ちながら聞く母。
「コンソメでいい?」
「これ、捨てたいんだけど。」
紙袋を掲げるあきら。
「何? ゴミ?」
「その辺置いといて。」
あきら、袋を置く。
中身を覗く母。
「あんたコレ! スパイクじゃない!」
「捨てちゃうの!?」
なんだろう。
陸上に対するもやもやを強引に断ち切りたいんだろうな。
復帰したいわけでもないのに、リハビリをする気もないのに、
周りは勝手に復帰を期待してくる。
そのズレが原因ではるかとの関係もぎくしゃくしてるし。
「いらない。」
「いらないってあんた…」
紙袋を傾けてさらに中を覗く母。
「あっユニフォームまである。」
「これもいらないの!?」
「本当に本当にいいの!?」
「うるさいなぁッ。」
激しい感情を見せるあきら。
「いらないって言ってんじゃん!!」
その場で固まる母。
目を伏せるあきら。
おお~。なにこの険悪なムード。
この場はどう考えてもあきらが悪いんだけど、
子供ってたまにこういうことやらかすんだよなぁ。
自分も忘れているだけで身に覚えがあるように思えてくるから怖い。
というか、絶対あるはずなんだよ。
これは要するに親に対する甘えなんだ思った。
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ケンカするあきらと母を救ったのは「ともえちゃん」
インターホンが鳴る。
「お姉ちゃん あきら久しぶり~~」
片手を上げて挨拶する女性。
「ともえちゃんだよーーーん」
お母さんの妹だからあきらにとってはおばさんになるわけだね。
あきらと母が凛とした感じだとしたら、
ともえは明るくホワッとした感じの姉ちゃんだね。
間違いなくあきたと母の二人とはタイプが違う。
「連絡くらいよこしなさいよ。」
「突然のほうが面白いじゃない。」
「ハイコレフランス土産♪」
「日本未発売のチョコレート」
「あら」チョコを受け取る母。
「ありがと。このためにわざわざ?」
「ノンノン」
指を振るともえ。
「これから3人で温泉行こーーー」
「箱根ロマンスカーに乗って」
「あらそうなの。」
笑顔の母。「え?」
「温泉~~~~!?これから!?何突然バカみたいなこと言ってんの?」
「だから突然のほうが面白いって言ってるでショ。」
母の反応に全く動じないともえ。
「ねーあきら、温泉行きたいよねー?」
あきら、無表情の顔を背けて「あたし行かない。」
「なーにノリ悪いこと言ってんのよ!」
あきらを引っ張るともえ。
「ホラ行こ行こ~!」
強引だなぁ。でもグッジョブだと思う。
仲直りするキッカケとしてタイミングばっちりでしょう。
ともえと母が隣合わせの席に座り、
その前の座席にあきらが位置している。
「あたしビール飲んじゃおっかなー車内販売こいこい」
「ちょっと…」ともえを注意する母。
「ねー座席向かい合わせにしよーよー」とともえ。
「いいわよ別に、このままで」と文庫本から目を離さず母。
「えー?何、ケンカしてんのー?」とともえ。
(…)
(…)
母とあきら、それぞれ沈黙。
一人窓の外を見つめるあきら。
おうおう。やはり仲直りはしてないよね。
楽しいはずの行きの新幹線車内が冷戦状態でワロタ。
ともえば良く平気だよなぁ(笑)。
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温泉旅館にて
「お食事は19時からでよろしいですか?」
「ハイ。」
「ではどうぞごゆっくり~」
「いい旅館じゃない。」と母。
「でしょーっ。」とともえ。
「よーし!じゃさっそく温泉入ろう!」
「もう!?」と母。
「oui(ウィ)」とともえ。
「あきらも行くでしょ?」
憮然とした表情のあきら。
「あたしあとで入る。」
「えーーーいこーよぉー。」とともえ。
「行きたくないのを無理に誘うことないわよ。」と浴場に向け歩き出す母。
「あっお姉ちゃん待ってよーっ」
母とともえがふすまを閉めて出て行くと畳に大の字に寝転がるあきら。
険悪。
怖い。
せっかくの温泉でこれはもったいないなぁ。
「あーおいし~~。やっぱ日本食サイコー」と食事に喜ぶともえ。
続けて、「ねーねーあきら。」
茶碗蒸しを食べているあきらに話しかける。
「足のケがってもう大丈夫なの?」
「また走れるようになるんでしょ?」
「リハビリとかしてるの?」
「………」
沈黙するあきら。
お茶を啜りながらやりとりを見つめる母。
仲居によってガラッと唐突にふすまが開けられる。
「失礼致します。おナベに火をおつけ致しますね~~!」
「わーいっ」喜ぶともえ。
「火がきえましたらお召し上がりください」と仲居。
ともえは知ってか知らずか二人の不仲の原因の真相に近いような話題をあきらに話を振ったのか?
たぶん、単純に聞きたかっただけだと思う(笑)。
ともえは出来上がった様子でさらに徳利をお猪口に傾ける。
「いや~~いーね~~」
「女3人、温泉でまったり…」
ご機嫌な様子のともえ。
「楽しーじゃーないのー!!」
静まり返るあきらと母。
「あたしもう寝る。」とあきら。
「え!?」驚くともえ。
「あたしもなんか疲れたわ。」と母。
「はァ!?」とともえ。
「おやすみー」
おいおい、このままだと関係をただすのがどんどん労力がいるようになってしまうよ。
大丈夫か?
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仲直りするあきらと母
ともえに無理やり温泉に連れてこられたあきらと母。
「あーーホラホラ星が超キレーイ」とはしゃぐともえ。
「もーあんたって本当にゴーインよね。」と母。
「あきら!足元すべらないよう気をつけなさいね。」
「……」黙っているあきら。
ともえのファインプレイ。強引でよかったね。
このままバラバラのまま一夜が明けていたらさらに関係はこじれていたかも。
せっかくお母さんから歩み寄ってくれているのにあきらはやっぱり子供だね(笑)。
そしてお母さんはやっぱりお母さんだ。
こういう関係になること普通にどこの家庭でもあるからリアルだと思う。
「っつたくお姉ちゃんてば本当心配性だよね。」ともえが笑いながら話す。
「あきらのこととなると特に!」
「親なんて皆そんなもんよ。」
「あきらが小2くらいの時さぁ、あたし預かったことあったでしょ。」
「そしたらあんた熱出しちゃって。」
「大したことなかったし大丈夫だって言ったのに、姉ちゃん仕事早抜けしてむかえに来てさー。」
「あの時の顔ったら。」あきらに問うともえ。
「あきら覚えてる?」
「それは覚えてないけど……」口を開くあきら。
あー、ようやくまともに口を開いた!
ここまで読んでて心が痛かったわ。
特に母の気持ちを考えると辛かった。
あきらも関係修復のタイミングを見つけられないように見えてしまって、やっぱり辛かった。
あきらはクールに見えてなんだかんだ子供なんだよなぁ。
しかも結構激しいものを持っている。
芯の強さを感じる一方、それは頑固さにも繋がってるんだね。
病院、怪我をして治療を受けたあきらとそばに寄り添うはるかと顧問らしき男。
部屋の入り口で息を弾ませているあきらの母。
回想終了。
「はーのぼせてきた」照れ隠しのように独り言を言う母。
当時の記憶を思い出すあきら。
ここ秀逸な見せ方だなぁと思う。
回想も長々としておらず、必要なところだけを無駄なく見せてる。
ともえだけが寝ている。
「…お母さん。」あきらが隣の母に話しかける。
「………何?」あきらに背を向けたまま答える母。
「スパイク、やっぱり捨てないでおいて。」
それを聞いて涙を流す母。
「うん。」
そして、夜は更けていくのだった。
一生懸命やってきた姿を見ているわけだから簡単には陸上を捨てて欲しくないよね。
そもそも唐突だったから納得できないだろうし、
最悪辞めるにしても納得できる理由が欲しいだろう。
ケガもリハビリすれば問題なく走れるようになれる可能性が大なわけで。
お母さん良かったね。
以上、恋は雨上がりのように51話のネタバレ感想と考察でした。
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