第51話
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ハロウィンを楽しむ勇斗と従業員
「橘さんの希望通りシフト組んだけど…」
近藤が11月のシフト表を映したPCの前で物思いにふける。
(他にやりたいことなんて、ありません)
ロッカーに手を当てたまま、
まるで自分に言い聞かせているかのようなあきらの様子を思い出す近藤。
(……)
コンコン。
背後でドアをノックする音。
コンコン。
「ハイ」
近藤の返事に応じてドアが開かれる。
「トリックオアトリー!」
目線が下がる近藤。
あきらのあんな様子を見せられちゃあ、素直に、
あきらの言葉の意味そのままに「他にやりたいことなんてない」なんて解釈できないわ。
そこには休憩中の久保、ユイ、吉澤の三人の前にお化けの仮装をした子供がいる。
「あ」
お化けがあきらに気づく。たたっ、と走り寄る。
「トリックオア、トリーッ!!」
子供は本当にトリックオアトリートって言うのかな。
リアルで言われてるの聞いたことないけど。
みんなしてお化けに扮装した勇斗に笑いかけている様子はとてもなごむね。
差し出されたキシリトールガムをじっと見つめるお化け。
「もっといいのないの~~~?」
お化けの扮装を解いて顔を見せながら、
あきらに他にお菓子をねだる勇斗。
「コラ勇斗!せっかくくれたのになんだ、そのいい草は!」
勇斗を軽く叱る近藤。
近藤に視線を向け、目を合わせるあきら。
あきらの視線を沈黙で受ける近藤。
あきらかわいすぎ。そのキシリトールガム直接食わせてほしい。
ユイが勇斗に聞く。
ユイに用意されたパフェをご機嫌で食べる勇斗。
その様子を見ながら、
「ハロウィンかー楽しそースねー」と吉澤。
「図工の時間に作ったんだって」とユイ。
「あたしの時代にはここまで定着してなかったわ~」と久保。
ハロウィン定着は本当にごく最近だと思う。
10年位前から言われてはいたけど実施していたのはせいぜい幼稚園とかくらいで、
とても社会全体での盛り上がりはなかった。
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あきらを意識する近藤
(シフト表を渡して、最終確認)
あきらの様子をみながら唱える近藤。
(確認…)
(なんか妙にキンチョーするな…)
「た、たつばなさんコレ…」
名前を言おうとして噛んでしまう近藤。
(げっ)
(かんだ!)
時が止まったような瞬間。
「3番テーブルパスタとハンバーグセットあがりーーーー!」
「16番テーブルビーフシチューあがりーーーー!!」
「追加にシーザーサラダもあがりーーーーッ!」
立て続けにキッチンから料理が出来たのを知らせる掛け声が上がる。
近藤、明らかに以前よりあきらを強く意識しているね。
以前から好きになっているとは思うけど、その度合いが強まる兆しが見える。
「橘さんサラダお願い!5番テーブルね!」
「西田さんは16番!!」久保が焦りながらも的確に指示を出す。
「はいっ」とあきら。
「ハイッ」とユイ。
「店長もボーッとしてないで運んでください!!」
近藤は「ハイッ」久保にすごまれて驚きながら返事する。
あきらが料理を運んでいく。
その後姿に目を奪われる近藤。
そんな近藤に「はやく!」とすごむ久保。
「はいっ」運んでいく近藤。
時間が過ぎる。
近藤、明らかにあきらを意識する時間が増えてるよなぁ。
正直あきらに好意を示されたら心乱されないわけないんだから、
いよいよ近藤本格的に惚れ始めたか。
でも、タイミング遅くないかなぁ。
あきらの冷たい視線
あきらが久保に声をかける。
「はーい」と返事をする久保。
あきらは自分用のホットサンドとコーヒーを載せたトレイを持ちながら休憩室のドアを開ける。
テーブルにいたのは本のようなものを開いている勇斗。
「宿題してるの?」椅子に腰かけながら声をかけるあきら。
「うん」宿題から目を離さず答える勇斗。
ホットサンドに噛り付く瞬間。
ガチャ
あきらの背後で近藤によってドアが開かれる。
「あ、おつかれさま。」
わずかに戸惑いながら声をかける近藤。
「おつかれさまです」
特に動じることなく返事するあきら。
あれ、なんか冷えた反応。
いつもはあきらが焦っていたように思うんだけど……。
これはあきらの気持ちが沈静化してきてしまったか?
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妙な緊張を感じる近藤。
「おっ勇斗、宿題やってるのか? エライエライ。」
近藤、自らの席に向かう途中で勇斗の頭をなでる。
「まあね。」宿題から目を離さず答える勇斗。
ギッ
腰かける近藤。
(…)「できたっ。」
勇斗が声をあげる。
「みてっ!」勇斗が今仕上げたばかりの宿題をあきらに渡す。
そこには細かい迷路の絵。
「すごいでしょー!」
勇斗が笑いながら無邪気に言う。
無邪気なのがいいよね。
ってか小学生くらいの時って、こういう迷路よく作った気がする。
作るだけで誰も解かないんだよね(笑)。
「といていいよっ」
「え…ムリだよ…」
くすくすと広がる笑い。
(お。)
何か思いつく近藤。
「コラコラ勇斗~~」
近藤、勇斗とあきらを振り返りながら言う。
「お姉さんの休憩をジャマしちゃダメだぞ~~」
【雰囲気便乗おじさん登場!!】はひどい(笑)。
これ、ダメなのか(笑)?
おっさん差別だ。
勇斗が近藤にねだる。
「え?」
近藤、笑顔で固まる。
「面白いハナシ…?」
(………)
何かを考えている近藤。
「よし。」
小説家の面目躍如となるか?
大いに期待したいところだが。
「その犬は真っ白でした。」
「耳も足も体も白くて、もちろんしっぽも白い。」
「しっぽも白い。」
「尾も白い。」
「面白い。」
「なんつってー。」
「あははは。」冗談っぽく軽く笑う近藤。
「は?」
ゴミでも見るかのような目で問い返すあきら。
この表情はマジでヤバイ(笑)。
大事故じゃん。
特にあきらみたいなかわいい子にこれやられたら死にたくなる。
ってか近藤のことが好きじゃなかったのかよ。
あきらはもっとツッコむとか良好な反応を返してあげてよ~(笑)。
いくら好きでもこればっかりは許せなかったか。
まぁベタベタかつ本当に何の捻りも無くてくだらないから寛容さが持てなくても全く責められないが(笑)。
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「吉澤くん。ちょっと。」近藤が吉澤を手招きする。
「ある所に(中略)尾も白い。面白い。」
「どう?」
さっきの話を披露して吉澤から感想を求める近藤。
(……)間を置いて応える吉澤。「クソつまんないっス。」
比較的寛容かつポジティブな反応を返してくれる期待が出来る吉澤に聞かせてこの反応(笑)。
これはもうマジでくだらないことを認めるしかない。仕方ないわ(笑)。
ってか本気でウケると思ってたんだとしたら近藤に小説家の才能は……(笑)。
柔らかいあきらの笑み
「つらい…」
休憩室から外に出て夜空の星を見ながら煙草を吸う近藤。
その傍らをあきらが帰るためにドアを開けて出てくる。
「あっ…もう上がり!?」
落ち着きのなくなる近藤。
「…はい。」無表情で答えるあきら。
「ちょっと、ちょっと待って!」
あきらを引き留め、休憩室に入ってから戻って来る近藤。
「コレ、シフト表。」
「一応、希望通りに組んだんだけど…その…」
あきらを見る近藤。
あきらはシフト表を見ながら微笑を浮かべている。
「ありがとうございます。」
このあきらめっちゃいい表情してるんだよなぁ。
何だろう。
陸上を忘れたいからあきらの要望通り比較的過密なシフトが組まれたことに感謝しているのだろうか。
あきら、近藤に軽く礼をしながら歩き始める。
「あ、うん…」
「おつかれ…」
見送る近藤。
歩き出したあきらの髪が近藤の目の前に舞い上がる。
近藤、軽く余韻に浸る。
「ってそうじゃなくって!!」
お化けと化した勇斗が頭を抱える近藤のそばに近寄る。
これ、あきらの近藤への気持ちが大分落ち着いてないかな?
女心は秋の空なんて失礼な言葉があるけど、実際女性に限らず人の心は移ろいゆくものだと思う。
子供の時、あるおもちゃがどうしても欲しいけどでも買ってもらえずに暫くすると、
ある日全然欲しくなくなっている事に気づくことなんて事が何回もあったから分かる。
恋愛感情だって相手の好意を求めてる感情ともいえるわけだからそれに似ているだろう。
あれだけ燃え上がっていたあきらの近藤への恋心はちょっと沈静化したようにみえるけど、
二人の関係性は出会う以前のフラットに近い状態に戻ったわけではなく、
今度は近藤があきらを意識して、特別な思いを抱き始めているのが分かる。
以上、恋は雨上がりのように51話のネタバレ感想と考察でした。
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