第58話
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近藤の不眠症の理由は
目の下に隈がある近藤店長が紙を見ながら店員一同に呼びかけている。
「クリスマスの新メニューがはじまります。」
あきら、ユイ、加瀬、澤、久保、大塚も揃って紙を見ながら近藤の話に耳を傾けている。
「キッチンは大塚さん、ホールは久保さんの指示に従って盛りつけなど覚えてください。」
「それじゃあ みんなよろしくお願い……」
ふあーっというあくびを我慢できず、最後まで言葉が続かない近藤。
比較的珍しい様子。
おっちょこちょいな面は見せてもこういう様子はこれまでなかった。
「……」あきらの隣で、近藤の様子を見て何か考えているが、しかし何も言わない久保。
「そいじゃ…」近藤が店員一同の前から去ろうと片手を上げて歩いていく。
「店長」その後を追いかけるようにして呼びかけるあきら。
振り返る近藤。
「あの、このデザートの…」あきらが紙を見ながら質問しようとすると、
近藤は両掌をあきらに向けて慌て気味に「久保さんにきいて!」とらしくない様子であきらに答える。
近藤はそれだけ言って、ぴゅーっとあきらから素早く去っていく。
やはりあきらへの自分の気持ちに気づいてからおかしくなったんだろうか。
自覚してからちょっと時間が経ってたように思うけど、ジワジワ心に浸食してきたのか?
近藤は自らのデスクに座って、肘をついて両手で顔を覆っている。
「……」
おもむろに顔に当てていた両手を下に下ろし、カタカタとキーボードに入力していく。
検索窓に入力されている「不眠 解消 方法」。検索ボタンをクリックする。
「不眠すか。」
「わぁ!!」
近藤の背後から声をかけたのはドリンクを片手にした加瀬。
びっくりする近藤。
「加瀬君!! どうしてここに!?」近藤は加瀬に半身を向けて笑顔を作って問う。
「昼休憩スけど。」即答する加瀬。
「あ!!」
「いやあ~~~」
笑顔を作ったまま答える近藤。
「最近寝つきが悪くて~~~年かな~~~なんて…」
「不眠ねぇ…」タバコをくわえながら視線を中空におき、何かを思い出すような様子の加瀬。
「ハーブティーとか甘酒とか効くってききますけどね。」
「へー」感心した様子の近藤。
「ま、一番は悩みの元を解消することじゃないすか?」
どき、と図星を突かれ、近藤の表情から笑顔が消える。
「恋わずらい…とか?」加瀬は近藤の目を見ながら言って、
「冗談すけど。」近藤から視線を外す。
「あはははははやめてくれよ加瀬君」
笑っているが表情は青ざめている近藤。
「悩みなんてないよ。ないないあははは。」
加瀬は近藤の異変があきらによるものではないかと薄々感付いてるね。
植物園であきらといるところを見ているし、何かしらの関係の進展を感じ取っているのかも。
加瀬が、近藤にあきらが惚れていることを知っていることを近藤は知らない。
これがどう今後の話に作用していくか。
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甘い夢
近藤は加瀬に教えてもらって用意した紅茶、甘酒、そして睡眠改善薬を一気に流し込み、勢いそのまま布団に入り目を閉じる。
しかしすぐ目を開く。
「あ”~~~」
両手で顔を覆って悲鳴のような声を出す。
(恋わずらい…とか?)
加瀬を思い出す近藤。
「……」
近藤は、学生じゃあるまいし、と両手で顔を覆ったまま口に出す。
顔から両手を離し、再び静かに目を閉じる。
枕元から何者かの右手がゆっくりと伸び、近藤の右頬に伸びる。
近藤がゆっくりと目を開けるとそこには近藤を覗き込む微笑を浮かべたあきらの姿。
あきらの右手が近藤の右頬に触れている。
口をぽかんと開けたままあきらを見ている近藤。
ずっと見ているとあきらの口元が動く。
これはたまらん。こんな夢見れたら幸せだろうな~。
11時にセットされた目覚まし時計が鳴る。
(笑えない。)
ずっと鳴っている時計の音を聞きながら暗い表情の近藤。
これはもう完全に恋わずらいだなぁ。
自覚するともうダメなんだよね。
しかし近藤は素晴らしい夢を見るなぁ。苦しいだろうけど、幸せそうだ。
ちひろにあきらの存在を気づかれた
「おいオッサン、」
俯き加減の近藤の頭上から声をかけられる。
「金出しな。」
顔を上げる近藤。
そこには咥え煙草をくゆらせながら近藤を鋭く見つめるちひろがいる。
近藤が公園に呼んでいたのだった。
急に呼びつけた理由は何だと問うちひろ。
近藤はちひろに、気分転換のためだと明るさを保ちながら答える。
ちひろは、自分も気分転換したかったと答える。
小説の話でもしようという近藤にそれでは気分転換にならないというちひろ。
ちひろの誘いでパチンコに行くことに。
並んでパチンコを打つも笑顔などまるでなし。同じような険しい表情でパチンコを打つ二人。
「ちきしょーーーーっ!!」
パチンコ屋を出て近藤と並んで歩きながら叫ぶちひろ。
「……」近藤が携帯を開く。
その様子に気づくちひろは連絡を待っているのかと近藤に聞く
いや別に、と答える近藤。
近藤の様子が浮かない。恋わずらいを忘れるためにちひろと会って気分転換してるはずなのにかえってあきらのことを考えてしまうとしたら、これはもう重症だ。
同意する近藤。
ハンバーガー屋に入った二人。
久々に食べると美味いと笑顔のちひろ。
「歳とると胃もたれるしあんま食わねーよな。」
ポテトを食べながら答える近藤。
学生の時は金無いから良く食べてたなと笑顔のちひろ。
どこか上の空の様子の近藤は再び携帯をチェックする。
「……」
ちひろは黙ってその様子を面白くなさそうに見ている。
「オイ! 俺様をムシして誰とメールしてんだよ。」
近藤に注意するちひろ。
「へ!?」と間抜けな声で反応する近藤。
「してねーよ。メールなんて。」
何故携帯を気にしているのか、と問うちひろ。
「きんきゅうのれんらくとか…」とイマイチちひろに目を合わせず答える近藤。
近藤は隠し事なんて出来るような器用な人間じゃない。
これはバレるね。あきらの存在が。
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じっと近藤を見ながら問うちひろ。
「か、隠し事? し、してないけど… なにも…」
目が泳いでいて明らかに様子がおかしい近藤。
じーっと近藤を見るちひろ。
ちひろから不自然に目を逸らして口笛を吹く近藤。
「ウソだッ!!」
語気強く近藤に言うちひろ。
「そのケータイに何かヒミツがあるんだろ!! 見せろ!! この!!」
やめろ、と拒否しながらも携帯を奪われる近藤。
ちひろは、片手で携帯の画面を見ながら、もう片方の手で、携帯を取り戻そうとする近藤の顔を突っ張っている。
携帯の画面には宛先が「橘あきら」、題名を「近藤です」の状態で本文には何も文字が入力されていないメールの作成画面が表示されている。
このメール作成画面は何だと問うちひろ。
何も送ってない、という近藤の言葉を無視してためらいメールかと看破する。
この画面で、何度も携帯を覗いていたらそりゃためらいメールだとバレるでしょうよ(笑)。
近藤はつくづく隠し事が出来ないね。
「ファミレスの男性社員の橘あきら君だよ!」
ひったくるようにしてちひろから携帯を取り戻す近藤。
「男性社員~~~?」
「メールする~~~?」
「男性社員に~~~?」
ちひろと目を合わせない近藤。
なぜわざわざ「男性社員」とつけてしまったのか。
とことんハマってるね(笑)。
羨ましいなぁ。
二人の間にしばし沈黙が流れる。
「お前ソッチ?」若干引きながら問うちひろ。
「ちげーよ」即座に否定する近藤。
「さては女だろ。」
図星を突かれ、ギク、となる近藤。
そうなのか、あきらは女でもある名前だ、と得心するちひろ。
ちひろは近藤の逆で、鋭く、抜け目がないのを感じる。
1つ質問する毎にどんどん真相に迫ってる(笑)。
近藤はつくづくわかりやすすぎる。
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「…なァ近藤。」
「なんだよ!!」
「学生時代に戻ったみたいで楽しいな」テーブルに両手で頬杖をついて言う近藤。
「そうだね…」近藤は疲れた表情でドリンクのストローを吸って、ズコ、という情けない音を鳴らす。
以上、恋は雨上がりのように 第58話でした。
ついに加瀬以外の人間に恋の対象をしてのあきらの存在に気づかれてしまった!
今後、ちひろと近藤の関係性なら、ほぼ間違いなくちひろが半分遊び感覚で近藤の恋に協力するんじゃないだろうか。
橘あきらという女性に恋している。
ちひろがそれだけの情報を得て満足するわけがなく、当然あきらの容姿等も知りたいだろう。
今後のちひろの絡み方としては、
- 1.二人の恋が成就するように協力するパターン(近藤の背中を押すのみ)。
- 2.年齢が離れすぎているからあきらめろ、と諫めるパターン。
- 3.あきらに惚れて恋のライバル化。近藤との友情ブレイクの最悪パターン。
多分1番の協力パターン、もしくは2番だと思う。というかそうじゃないと漫画がブチ壊しなんだよなぁ。
まずあり得ないけど、くれぐれも3番のちひろがあきらに横恋慕する、なんて展開にはならないで欲しいわ。
恋のドロドロ展開はこの漫画のカラーじゃない。
加瀬が恋邪魔ポジションから無害ポジションに落ち着いたように、そういう展開にはならないはず。
仮にそうなったとしてもあきらが近藤以外の男を見るなんてあり得ないから、その場合心配なのは近藤とちひろの友情だろう。
それもまたこの漫画らしくない。
ここまでで描いてきた近藤とちひろの再会と友情の下りは近藤対ちひろの前フリなんてことはまずありえないだろう。
恋のバトルよりは社会の常識とかそういうものと戦うタイプの話だと思っているので元より3番の心配はしてない。
以上、恋は雨上がりのように58話のネタバレ感想と考察でした。
恋は雨上がりのように59話のネタバレ感想と考察の詳細は以下をクリック。
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