第18話
ハムスターを飼う羽目になった近藤だが、従業員たちとのコミュニケーションが活発になり、自分に必要なものはこれだと確信する。
あきらはそんな店長に話しかけたそうにしているが他の従業員に邪魔されて会話できないでいた。
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ハムスターバブル
仕事中、PC画面を見たままボーッとしている近藤は、コインランドリーからの帰り道であきらから言われた一言がずっと脳裏に響いていた。
「……」
映画デートの日で終わりだと思っていた近藤。
外に通じる扉が開く。
「お疲れ様です。」
制服姿のあきらが出勤する。
「あっ、お、おつかれ!」照れながらどこかぎこちない近藤。
二人の間に妙な間が出来る。
「あの、店長…」あきらが近藤に呼びかける。
近藤はギク、としながら振り向く。
意識してるなぁ(笑)。
あきらの攻勢が効いている。
そこへ満面の笑みを浮かべたユイが勢いよくドアを開けて事務所に入ってきた。
「これ…」と何かを差し出そうとしているあきらの声がかき消される。
ユイがつぶの様子を近藤に聞く。
それを会話のとっかかりに、どんどんユイが飼っていたハムスターの話をしだす。
「わからないことがあったらなんでも聞いてくださいね!」
「ありがとう。」
ユイと店長の二人の会話を黙って聞いているあきら。手には紙がある。
「あ、橘さん なんだっけ?」会話が弾んで笑顔の近藤があきらに話しかける。
(あれ?)
そこには既にあきらの姿は無かった。
フロアでなにやらチェックする仕事をしている近藤の姿を見て、あきらはポケットから紙を取り出す。
「店ちょ…」
「店長――――ッ!!」
大きな声で店長を呼ぶ吉澤の声にあきらの声がかき消される。
吉澤はくず野菜を近藤に手渡す。
おー、ありがとう、と受け取る近藤。
吉澤もハムスターを飼っていたからなんでも聞いてくれと言う。
またしても紙を渡し損ねたあきらは仕事に戻る。
あきらが可哀想だ。ハムスターの話題がここまで強いとは……。
(あれ? 今コレ俺…)
店長になって以来一番スタッフとコミュニケーションがとれている、と自覚する近藤。
俺に必要だったのはビジネス書ではなくハムスターだったんだ!! と天啓を得る。
従業員みんなで明るく笑っている。その後ろでひとり働くあきら。
重要なことに気づいた近藤。
しかし従業員が仕事の手を止めてしまって働かないのは注意しないと。
ひとり働いているあきらが健気だ。
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寂しいあきら
あきらがユイに声をかける。何? と振り向くユイ。
「ユイちゃんって…その…店長のこと、前に…」
「クサイよ!!」
ユイは、ズバッと以前発言した立場のまま答える。
切れ味良過ぎ。
「あ――うん。」
「大丈夫!! 話すとき口呼吸してるから!!」にぱ、と笑顔満開のユイ。
「そう…」やはりあきらは寂しそう。
死角であきらとユイの会話を聞いていた近藤はず~~~んと肩を落とす。
ユイは破壊力が高すぎ。さっきまでの笑顔から一転、近藤が完全にグロッキーになってて笑える。
でも近藤と全然会話できないあきらとしては笑えない。
近藤は天を仰ぎ、涙を流しながら、顎の前でぐっ、と拳を固める。
(受け入れてもらっていることには変わりない!! ハズ!!)
「……」
(なんだか最近、うれしいと感じることが増えた気がする…)
(俺自身、何も変わってないのに…)
あきらの背中を見る近藤。
それから首をかいて事務所の方に歩いていく。
あきらと会えてよかったなぁ。
ふとした瞬間に、重要なことに気づいた。
キッチンでオーダーを読み上げるとそこには誰もいない。
スタッフルーム、と横から声が聞こえる。
「みーんな店長のとこ行ってるよ。」腕組みをした加瀬が呆れている。
あきらがツカツカと事務所へ歩いていく。
一時期より加瀬から嫌味が抜けてるような。
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「バブル」のち「あきら」
その様子をあきらはその場で苦々しく見ている。
すう、と息を吸いこむ。
「みなさん ハムスターはもういいから仕事してください!!!」
「!?」びっくりする近藤。
あきらの一言に「それもそうね」という久保の言葉をキッカケに集団がみるみる散ってゆく。
口呼吸つかれたー、とユイ。
お皿ふこー、と吉澤。
仕事仕事、と大塚。
5番卓そろそろデザートね、と久保。
ユイが笑える。
やはり久保さんは仕事が出来るなぁ。
立ち止まって正面から近藤を見据えるあきら。
「あれ?」一瞬のことにあっけにとられる近藤。
事務所の扉が閉まったあと、あきらはゆっくりと近藤の元へ近づいていく。
「店長、これからハムスターのことは、全部あたしに聞いてください。」あたしも飼ってたんで、とあきらは近藤を見下ろすように言う。
そして頬を赤く染め、目をそらす。
あきらがむちゃかわいい。
拗ねたような雰囲気から一転照れ。
こんな表情の移り変わり見せられて惚れないわけがない。
「コレ…」
あきらはポケットから紙を取り出す。
「ハムスターに必要なものメモしてきました…」
ようやく近藤に渡すことができたあきら。
マイナーバンドがメジャーになると古参ファンは寂しいもんな、と調理しながらつぶやく加瀬。
そんな加瀬になんのことかわからない様子の大塚と吉澤。
加瀬の例えは絶妙だよなぁ。
これまであきらはわりと好きな時に近藤と会話できていたのにハムスターバブルで一気に話題の中心になってしまって会話の機会が失われてしまった。
加瀬の洞察力が光ってる。
あと、加瀬から毒気が大分薄れてきた。
今後はあきらの恋を陰からアシスト、とまではいかなくてもそれなりにフォローする役割に変化していくのだろう。
あきらの近藤に対する揺るがない気持ちを感じて軽い気持ちであきらに手を出そうとすることを諦めたのか。
以上、恋は雨上がりのように18話のネタバレ感想と考察でした。
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