第47話
スポーツ用品店で靴を見ていたはるかは、夏祭りの日にあきらと親しそうに会話していた近藤に遭遇する。近藤を敵視して睨んだり、色々質問したりするはるか。会話をしていくうちにはるかは近藤の人となりを少しだけ知ることになる。
前回46話の詳細はこちらをクリックしてくださいね。
スポーツ用品店で出会う近藤とはるか
はるかがずらっと並んでいる運動靴のコーナーに立っている。
(あきらの記録はまだ抜いてない)
あの日、みずきの事を聞いてきたあきらに返した言葉を思いだす。
(あんなこと、言わなきゃよかったな…)
目の前の運動靴には意識がいかない。あきらのことを考えてもやもやとしているのを振り払うように頭を振る。
(考えたって仕方ない!)
「すみません! コレの24.5ってありますか?」
はるかが靴を持って店員に声をかける。
在庫を確認してまいります、色はこちらでよろしいですか、という店員にはい、と答えるはるか。
その視界に入ったものは近藤と勇斗だった。
「コレきついよ!」
座って靴を試し履きしている勇斗が近藤に訴えかける。
えっ、と驚く近藤。
「お前、サイズ19CMじゃなかったっけ。」
「22CMだし」
「え゛っ。」
「お前、いつもまにそんな成長…」
「お父さんっていっつもそう言う。」
近藤と勇斗のやりとりを見ている視線に近藤がん? と気づく。
じっと近藤を見下ろしているはるか。
ドーモ…? と笑い顔を浮かべて挨拶する近藤。
はるかは、近藤の反応を受けて、フイッと運動靴の方に視線を戻す。
「あ…」
「どーしたの?」
勇斗が近藤に問いかける。
「いやあ…お父さんにもよくわからん…。」
近藤は困ったような笑顔を浮かべて勇斗に答える。
(――こ、この人ってあの時の人だよね!?)
はるかは夏祭りの時のあきらと近藤の会話している様子を思い出す。
(あきらの、好きな人…)
「……」
「混んでるなァ。時間かかりそうだ。」
ふと、近藤がまた視線を感じる方を見るとはるかが自分を睨んでいる。
(こ、これは…)
(いわゆる…ゴミを見るような目!!)
(…まぁ、若い子にとっちゃあオッサンなんてそういうモンだ…)
はるかから視線を外し、前に向き直る近藤。
近藤にとってはとばっちりのような仕打ち。
不憫だなぁと思う。
ぼーっと店員が空くのを待っている。
その近藤をじーっと見ているはるか。
(ものすごくボーーーッしてる…洋服もヘン。)
ゴミ扱いされていると思い込んでショックのあまり思考のブレーカーを落としているように見える(笑)。
スポンサーリンク
「やけにゴツイなぁ…走りにくいんじゃないか?」
近藤は、勇斗が持ってきた黒い靴を手に取って眺めている。
「でもカッコイー。」
「う~ん。まー、ココに置いてあるってことは、運動靴用なんだろうけど…」
はるかは、近藤と勇斗のやりとりを横目で見ている。
「お店の人が戻ってきたら聞いてみよう。」
「50Mそうとかなら、それ良いと思いますよ。」
近藤と勇斗は声のした方を向く。
再び近藤とはるかの目が合う。
「ソールの中がバネ構造になってて、それが地面をける時に推進力になるんです。」
視線を外しながら一息に言い終えると、はるかは再び近藤と視線を合わせる。
「あ…そうなん…ですか…」
虚を突かれたような反応で近藤が答える。
「へ~~ バネかぁっ。」
近藤は笑顔になってはるかを見る。
「……」
無言で近藤を見つめ返すはるか。
靴の解説をするはるか。
詳しいんだね、とはるかを褒める近藤。
「陸上やってるんで。」
近藤から視線を外すはるか。
(陸上…)
(橘さんと同い年くらいからなァ…)
はるかを見上げる近藤。
「コラ走るんじゃない!」
勇斗が走るのを咎める。
「あの…」
はるかが近藤に尋ねる。
ん? とはるかを見る近藤。
「結婚、されてるんですか?」
一瞬止まる近藤。
「ヘッ? ケッコン!? オレ!? エ……!?」
またまた虚を突かれて焦る近藤。
そんな近藤を見下ろすように、無言で見るはるか。
「バイ、バツイチです。」
お恥ずかしい、と頭に手をやって答える近藤。
(なんだ、この会話…)
「バ…ツイチ…?」
「バツイチっていうのは一度離婚して…」
「知ってます。」
近藤、受難の日。
見知らぬ女の子にいきなりこんな質問されたらそりゃ戸惑う。
はるかには友達を守るために情報を得る意味があるけど、近藤からしたら意味がわからない。
落とし物
「いろいろ教えてくれてありがとう!」
近藤がはるかに笑顔でお礼を言う。
「いえ…」
商品を受け取りながら、不愛想に答えるはるか。
レジを離れる時に、はるかがバッグにつけていた何かが落ちる。
その瞬間を見ていた勇斗。
買い物帰り、外を歩いているとはるかに向けておーいと声が聞こえる。
声の方を向くとそこにははるかに向けて必死に走って来る近藤と勇斗。
追って来る二人を見てぎょっとしたはるかは追いつかれないように走り始める。
(何!?)
(なんで追ってくんの!?)
あきらの友だちだってバレた!? と必死で逃げるはるか。
そんなわけないだろうけど、追いかけられているとそういう気分にもなるだろうなと思う(笑)。
スポンサーリンク
まだ追ってくるっ、とはるかが振り返ると近藤が何か握ったものを差し出している。
それを見て足を止めるはるか。
「勇斗…お父さんはもうダメだ…」
ゼエゼエ言いながら近藤はその場に崩れ落ちる。
がんばって! とその場でランニングする勇斗。
二人を影が覆う。
「何か用ですか?」
二人の前に進み出ていたはるか。
コレ、落とし物、と近藤が差し出したのはあきらからもらったダブりのキーホルダー。
はるかは鞄を見ていつの間にとれたんだ、という反応を見せる。
「ありがとうございます。」
はるかは礼を言いながら近藤から受け取る。
それにしてもやはり速いね、と座りこんでいる近藤がはるかに向けて笑う。
私、遅いほうですよ、長距離ランナーなんで、と答えるはるか。
それで!? と反応する近藤。
はるかに笑顔はない。
逆に、それだけあきらを大切に思っているということだろうか。
ここ好き。子供ってこんな反応するよなぁ。
そうかあ、と近藤。
「アキレス腱…」
「え?」
突如近藤から出た単語にドキっとするはるか。
「アキレス腱をケガしたら…前と同じように走ることってできないのかな…」
近藤は地面を見ながらあぐらをかいてぽつりと言う。
じっ、と近藤を見ているはるか。
「そんなことないですよ。」
「そうなんだ!?」
明るい表情ではるかを見上げる近藤。
その様子を見て目をはるかが見開く。
翔太が、はるか~おまたへ~とはるかと合流する。
今話してたおっさん誰? という翔太に、はるかは、悪い人ではないっぽい、と答える。
近藤があきらのケガのことを言っていることをはるかは察したのだろう。
あきらのアキレス腱が競技人生の終了を意味しないことを知った瞬間の近藤の笑顔にはるかは人柄の良さを見た。
でもはるかからしたらまだバツイチ子持ちのおっさんとの恋愛なんて、友人として到底承服できるものではないだろう。
今後はるかの近藤に対する見方がどう変化していくのか見物だと思う。
以上、恋は雨上がりのように47話のネタバレ感想と考察でした。
次回48話の詳細はこちらをクリックしてくださいね。
コメントを残す