第35話
限定のキーホルダーを買いに光植物園へやってきたあきら。そこで偶然にも近藤、勇斗、加瀬、その姉の珠子と出会う。
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あきらの近藤へ向ける真っ直ぐな好意が気になる加瀬
カーテンを開けて出ると仕事着の加瀬と鉢合わせる。
「おつかれ」加瀬が薄く笑って挨拶する。
「………お疲れ様です。」一瞬の沈黙の後、あきらは冷たい表情で挨拶を返す。
「何か言いことあったの? うれしそうな顔してたけど。」
「…別に何もないです。」あきらは表情を変えることなく答える。
「橘ちゃん、まだ店長のこと…」加瀬が問いかけている最中に事務所のドアが開く。
「お、二人ともおつかれさん。」近藤が笑顔で二人に挨拶する。
「おっ、お疲れ様です!!」あきらは頬を紅潮させ、大きな声で挨拶を返す。
加瀬は、あきらの表情を観察するような眼で見る。
あきらは近藤のことを頬を紅潮させたままじっと見ている。
「……」そんなあきらの表情を見ている加瀬。
わかりやすい好意。45歳と17歳という年齢ギャップからくる社会的圧力なんて全く苦にしていない様子で一心に近藤のことを見ているあきら。
加瀬は羨ましいとすら思っているのだろうか……。
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加瀬は、注意して玄関から足を踏み入れていく。
部屋の電気をつけるとそこには部屋のフローリングに直接女性が寝ていた。
じっと女性を見下ろす加瀬。
「姉貴、起きろ。」加瀬はしゃがんで姉に声をかける。
うーんまぶしい、と目を指でこする姉。
「亮ちゃんのために、心優しいお姉ちゃんがミネストローネを作って来ました―――――」
ミネストローネの入った容器を持ちながら加瀬に言う姉。
「おいし?」笑顔で聞く姉。
「あ――――」加瀬はミネストローネをひたすら食べている
「うれし?」
「あ―――」
ウフフ、よかった~と言って姉は缶ビールの栓を開けてぐびぐび飲む。
加瀬が傍らのビールの空き缶の山を見ている。
「プハーッうまいッ!!」
「姉貴、またフラれたの?」加瀬が被せるように問う。
姉がそのままの姿勢で泣き始める。
姉はマサフミのバカヤローッと泣き崩れる。
他に好きな人ができたんだって、付き合って1か月記念日だったのに…、とうつ伏せになってうっうっと嗚咽を漏らす。
「フラれるたびに弟の家で飲んだくれるのヤメロよな。」冷静に指摘する加瀬。
「いーじゃん。血を分けあったたった二人のキョーダイじゃない。」ぐすんと泣く姉。
「はじめて亮ちゃんに会った時…エ―――あたしに弟―――!? とか思ったけど…今では本当に血のつながってる弟だと思ってるよ。」
「このミネストローネ全部食っていいの?」加瀬が姉の言葉に反応せずに問う。
「うん…いいよ。それ…」姉は仰向けに寝転がったまま静かに答える。
加瀬がミネストローネをスプーンで口に運ぼうとする。
「本当は彼のために作ったんだけど…」
加瀬は口に入れず、スプーンを容器に置く。
加瀬は、仰向けのままで目を閉じている姉の両脇に腕を置き、上に陣取る。
姉はすぅ、と寝息を立てている。
加瀬は台所で食器に蛇口からザー、と水を入れている。
うーん、むにゃむにゃと部屋で寝ている姉の姿が見える。
(くそっ。)加瀬が煙草を吸う。
血のつながっている戸籍上の姉に、家族へ向けるものとは違う意味での好意を持っている加瀬。
家族同士という絶対の壁の存在に、加瀬は自らの想いにブレーキをかけざるを得ない。
光植物園にて
場面転換。光植物園。
高校生一枚、と受付のお姉さんに注文するあきら。お姉さんは500円ですと答える。
あきらはしゃがんで、お土産屋でまるみーシリーズキーホルダーのコーナーを真剣な顔でじっと見ている。
その横に母子がやってくる。
「え~~~? こんなのが欲しいの~~~?」なんだこれ、という表情でキーホルダーを一つ手に取る母。
「ム、ムキ彦…? もっと他にカワイイのあるじゃないよ~~」
「ダメ!! これじゃないと効かないの!!」女の子は両腕を上下にぶんぶん往復させて必死に説得する。
「効くって? 何に効くの?」
「そ、それは…」口ごもってしまう女の子。
やりとりを隣で聞いているあきら。
実はムキ彦は恋を叶える噂があるとして、小学生の間でひそかにブームとなっていた。
「言えない。」ぽっと顔を赤らめる女の子。
同じタイミングであきらもぽっと顔を赤らめる。
女の子もあきらもかわいすぎる。
あきらはなんで小学生の間で流行っているものに敏感なのか(笑)。
普段のあきらとはギャップがあっていいよなぁ。
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「来たかったんだもーん♪」笑顔の珠子。
本当はマサフミと来る予定だった、と泣く真似をする。
「別にいーけど。ヒマだし…」加瀬は頭をかきながらぼそっとつぶやく。
「亮ちゃん大スキ」
そんな加瀬に表情が明るくなった珠子は笑顔で加瀬の腕に抱きつく。
「持つべきものは心優しい弟ね」
笑顔の珠子と対照的にどこか浮かない表情の加瀬。
加瀬は煙草を買いに行くと珠子にことわる。うんと答える珠子。
あきらはキーホルダーを購入していた。
目当てのものが買えて満足そうな表情を浮かべている。
レジから離れようと振り返ったあきら。
「あれ?」
「!」あきらが誰かに気づく。
「げっ、売ってねーし!」飲み物しかない、と自販機の前で立ち尽くす加瀬。
こうやって喫煙者が淘汰されてゆくのか…とつぶやく。
あっちにあるかもよ? と珠子。
「あ…」加瀬が誰かを見つけて指さす。
あきらは近藤、勇斗と偶然会い、さらに加瀬、珠子と偶然会うのだった。
「あ、あれ?」近藤が手を頭にやる。
偶然に偶然が重なる。
あきら、近藤と勇斗、加瀬と珠子の3組が偶然同じ場所に同じ時間にいるとは……。
以上、恋は雨上がりのように35話のネタバレ感想と考察でした。
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