第4話
3話のおさらい
新メンバー吉澤
賑やかに世間話をしている女子学生の集団がワイワイ話しながら電車から降りていく。
座席に腰かけ、肘を手すりに置いた手で頬杖をついて微動だにしないあきら。
扉が閉まって電車が発進する。
賑やかな集団と比べると異質で独特な存在のあきら。
「オーダー入ります。」あきらがメモを見ながらいくつかのメニューを読み上げる。
メモから前に視線を移すあきら。
「おう! まかせとけ!!」
「愛をこめて焼き上げるってばよ!!」
はりきる吉澤の首にがしっと腕をかける大塚。
「新人は皿洗いからだ。」
ぐえっと変な声を上げる吉澤。
あまりのことに青ざめるあきらと対照的にプッと吹きだし、くすくす笑うユイ。
「おもしろいね。吉澤くんて。」
ユイがあきらに問う。
「いつもあんな感じなの?」
ん――…と興味の無さから答えに窮するあきら。
「クラスで人気者でしょー 吉澤くん」空気を読まずに続けるユイ。
ん――…と全く興味がない様子のあきら。
あきらとユイのやりとりに聞き耳を立てていた近藤。
(クラス…)
(あ。)
近藤は、雨の日の帰り、あきらの元に駆け寄っていた吉澤の姿を思い出す。
※1話参照
(そうか、吉澤くんはあの時の…)あきらとユイを見ながら考える近藤。
(若いっていいねえ~)笑顔の近藤はチャイムが鳴ってすぐ「はいただいまー」と反応する。
あきらが本当に吉澤に何の興味も無くて笑える。
近藤はあきらと吉澤の仲を勘違いしている。あきらが可哀想すぎる。
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ときめくものの言いあいっこ
ヒマだね、というユイにあきらがすぐに混む時間が来ると釘を刺すように言う。
しかしそんなあきらに構わずあれをやろうと呼びかけるユイ。
「胸がときもくもの言いあいっこ!」
「あたしからね!」笑顔で始めるユイ。
「フレンチトースト! ハイ次、あきらちゃんっ。」
ん――…と笑顔で考えるあきら。
「ピンクのガーベラ!」
「かぼちゃのプリン!」
「白黒ソックスのねこ。」
「チョコバナナクレープ!」
「リボンのサンダル。」
「ホイップたっぷりパンケーキ!」
「バラの香りのハンドクリーム。」
加瀬に話かける大塚。
「加瀬…彼女たちからマイナスイオンを感じるのだが」もっと近くに行きたい、という大塚。
「ハイ…自分もビシバシ感じています。」いきましょう! と大塚に答える加瀬。
言いあいっこはまだ続く。
「もっちり触感のチーズパン!」
「ん――――…」ピンクのガーベラはもう言ったし…と悩むあきら。
(胸がときめくもの。胸がときめくもの。)
(胸がときめくもの…)
「福利厚生完全完備。」
久保のにべもない一言に一気にマイナスイオンが雲散霧消する。キッチンでは吉澤が誤ってガシャーンと食器を割った。
「さ、仕事仕事と。」吉澤なにやってんだぁ、と大塚がキッチンに戻る。
つかのまの楽園であったと加瀬が悟ったように言う。
週休3日も胸がときめく、とユイに言う久保。ですねとユイは答える。
フロア見てきます、と二人から離れるあきら。
いやぁ。若い人にはピンとこないと思うけど大切だよ。本当に。
胸がときめくというよりあったら胸をなでおろす、の方が適切かもしれない。
若い人には全く伝わらないだろうけど……。
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お客の忘れ物
あきらは、食器を片付けるために座席に向かいながらも、レジで残高チェックをしている近藤の姿を振り返りながら見つめる。
食器を片付けていると何かに気づくあきら。
「店長!」
「今のお客様が…」あきらの手にはスマートホン。
「お客様ッ!」
「お忘れ物です――ッ!!」と急いで店の外に出て、スマホの持ち主に呼びかける近藤。
道路に出てみると遥か彼方に自転車に乗ったスマホの持ち主の姿。
「あっちゃ~自転車かあ。」
追いつくのは無理なので預かっておくと店内に戻ろうとする近藤。
あきらは自転車の乗っていった客が行った方向を見据えている。
(この先にある…信号にひっかかれば…)
「店長、それ貸してください。」店長からスマホを取り駆け出すあきら。
ぼうぜんとあきらの背中を見つめる近藤。
頼りがいがあるよなぁ。あきらって。カッコイイわ。
きっと女子から人気があるんだろうなぁ。そして、多分男からも人気があると思う。ただ誰もあきらに歯が立たないだけで(笑)。
吉澤に、あきらと同じ学校なのかと聞く加瀬、カップルで仲良くバイト? と青筋を立てて問う大塚。
二人の質問にただのクラスメートだと答える吉澤。
吉澤の背後でフーンと聞き耳を立てているユイ。
橘ってどんな感じですか? と加瀬に聞く吉澤。
「あ? クラスメートならお前のが知ってんだろ。」
「いや…俺が知ってるのは足が速いってくらいス…」
ラインのIDも知らない…と答える吉澤。
「足?」と同じポイント、同じタイミングで驚く加瀬と大塚。
「橘、すっげ足速いんスよ。体育祭のリレーとかもうすげくて。」
「ビュンビュンビュンビュン。」
「風を切るってああいうことかな」みたいな、とあきらを評する吉澤。
「フーン。じゃ、バイトなんかしないで部活とかすりゃいーのに。」仕事しながら言う加瀬。
「お前んとこ陸上部ないとか?」大塚が吉澤に問う。
あきらは陸上部だと答える吉澤。
「ていうか陸上部だったんスけど…」
皿を拭きながら答える吉澤を背後から見ているユイ。
皆意外とあきらのことを知らない様子。
そんなに積極的に自分の事を離す人間ではないんだなということが分かる。
(信号、止まれ)
祈りが通じたように、自転車の行く先の信号が青色から黄色に、黄色から赤色になる。
停止する自転車。
「お客様!」自転車の客の背中に呼びかけるあきら。
「お。」近藤の目に、あきらが自転車の客に信号で追いついたのが見える。
あきらが自転車の客にスマホを手渡しているのを確認し、「おお!」と目を輝かせる近藤。
歩いて戻って来るあきらを満面の笑顔で、拍手で迎える近藤。
「いや、すごいね!! 足速いんだね!!」
「感動しちゃったよ。たいしたもんだ!!」
目的を達して、店長も喜んでくれたはずなのに浮かない表情のあきら。
右足を引きずっているあきらは拍手を続ける近藤の前で右足首に手を当てて座り込んでしまった。
「橘さん?」
やはりケガは完治はしていなかったということなのか。
無理してしまった代償は大きかった。
無邪気に喜んでくれている近藤の手前、大げさに痛がることもしたくはなかっただろうけど、やはり痛かったんだな。
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慌てる近藤
「はい。半年前くらいにケガしてー…」と吉澤が答えている最中、バンッと勢いよく開くドア。鳴るチャイム。
「いらっしゃいませー…ってなんだ店長。」
「どうかしたんですか?」
ユイが声をかけるも慌てた様子で通り過ぎる近藤。
「ちょっと店まかせた!!」
トイレでしょ、とユイに言う久保。
「えらいこっちゃえらいこっちゃ。」
事務所で慌ててガチャガチャと何かを探している近藤。
車のカギを見つけて、外に出て車のエンジンをかける。
近藤は、しゃがみこんでいるあきらの前に車を止める。
「橘さんッ 病院行くよ!!」
近藤の顔を見るあきら。
このあきらがかわいい。
近藤は慌ててるからそんなこと思ってる余裕はなさそうだけど。
(これはセクハラでは…ナイッ!!)近藤は自身に強く言い聞かせてあきらに肩を貸す。
近藤らしいね。
現代は、セクハラの意図が無くても相手がそう思えばアウトな世の中だからこの近藤の反応は理解できる。
女に慣れてない様子も見て取れて面白い。
運転席であきらを担ぎ込む先の病院をどこにするか考えている近藤。
「救急だとこの辺は…」えーとえーとと慌てた様子。
「店長」
「何っ!? 痛い!?」後部座席のあきらに振り向く近藤。
「あたし…近くに通っている病院があるんですけど…」後部座席で右足を伸ばしているあきら。
傍らにはどけられている勇斗のおもちゃ。表情は冷静になっている。
「何? 店長とーしたの?」加瀬がユイに質問する。
「あきらちゃんと車乗ってどっか行っちゃった。」
『白黒ソックスのねこ』
『リボンのサンダル』
『バラの香りのハンドクリーム』
『店長』
走っていく車。
一生懸命な近藤が運転している後ろ姿に頬を染めるあきら。
きっとより強く惚れたんだろうな。
走って追いかけたのは大丈夫だという確信があったのだろうか。1話で足首に痛みが走ってたから万全ではないと知っていたはずなのに。
ひょっとして、店長に良いところを見せたいと思った部分もあるんだろうか。
あきらはそういう功名心とは遠いところにいる人間だと思うから、やはり店長のためになりたいという一心だったと考えられる。
才能のある人がケガで実力を発揮できないのは惜しいよね。
今後、陸上部にカムバックする展開を見てみたいとも思う。
以上、恋は雨上がりのように4話のネタバレ感想と考察でした。
恋は雨上がりのように5話のネタバレ感想と考察の詳細は以下をクリックしてくださいね。
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