第56話
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いい感じのあきらと近藤
あきらからプレゼントされた貝を指先で持って見つめる。
思い出すあきらの笑顔。
この笑顔かわいかったよなぁ。
惚れます。
「おつかれ様です」
あきらが事務所の入り口で雨に濡れた傘をたたんで近藤の顔を見て挨拶する。
「あ、おつかれさん!」笑顔で挨拶を返す近藤。
あきらの傘の先端から水が滴っているのに気づく。
「雨?」
「はい。今日は予報でも雨だって。」とあきら。
「ホントだ。音がする。」
サアア……と外から聞こえる雨音に気づく近藤。
サアアアア、という雨の音が事務所に静かに響く中、無言で、しかし近藤とあきらは微笑を浮かべて見つめ合う。
ちょっとナニコレ。
すごくいい感じだと思うんだけど……。
場面転換。ガーデン店内。
「シーフードグラタンでございますね。」
あきらが手にメニュー端末を持ちながら客に確認している。
あきらの働く姿を背後から見ている近藤。
「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
近藤は、ちょっと前からあきらのことを見過ぎだと思う。
多分秋くらいからかな。
あきらの告白からちょこちょこ外で会ったりしてるし、意識しないわけがない。
「オーダー入ります。」あきらが店内をきびきび歩いてキッチンに行く。
オーダーのチャイムが鳴るとまた、もと来た経路を歩いていく。
食事の終わったテーブルの片づけをしながらあきらの様子から目を離せない近藤。
近藤さん何してんすか(笑)。
明らかに見過ぎだから。
笑顔で客とやりとりするあきら。
初期に比べると愛想が良くなったように思える。
仕事に慣れて、あきらも成長したということか。
魅力的だわな。
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あきらを守りたい近藤
近藤はそのあきらの目線の先を追う。
そこには3人の女学生。
「あ!」あきらに向けて指さす女の子。
「本当に居た!!」
「橘先輩!」
笑顔になるわけでもなく、きょとんと立ちすくむあきら。
それは、あきらの後輩の3人だった。
「よくここでバイトしてるってわかったね…」
心なしか元気が薄れた様子のあきら。
ついに見つかったー、という感じかな。
あきらは、以前、学校であきらのバイトの話になって、行くと言った子に対して「こないで!」と語気強く言ったことがある。
よほどこのガーデンでの時間を学校生活と混ぜたくなかったのだろうなと思う。
あきらにとって好きな人がいて、陸上に挫折した自分を忘れられる大切な場所だったのだろう。
「雨で部活が休みになったんで来てみましたー!」
遠かったです~、とやはり笑顔の他の女の子。
「…そう。」
笑顔の後輩に比べるとやはりテンションが低いあきら。
後輩はあきらの普段と違う姿を見れてうれしそう。
一方あきらは、まるで聖域が汚されたような気分なのだろうか。
浮かない表情。
近藤が食器をキッチンに運びながらあきら達を見ている。
(陸上部…?)
近藤さん、目敏く観察してる(笑)。
「先輩制服超似合ってますー!!」
カワイー、とあきらを褒める女の子。
あきらは端末を操作しながら口元には笑顔を作っている。
その様子をキッチンから見ている近藤。
後輩たちのテーブルから離れて注文票を片手にキッチンに向かうあきら。
「オーダー入ります。」
近藤とすれ違うと立ち止まって読み上げるあきら。
そのあきらの様子を至近距離で見ている近藤。
あきらの表情はさきほどと打って変わって冷たい印象の怖い表情になっている。
その表情をじっと見ている近藤。
これまで見せたことがないあきらの表情。
その表情になるまでの一部始終を見ていた近藤。
振り向くあきら。
「あのテーブル、俺が担当するよ。」あきらにを見ながら、近藤は自分を指さす。
近藤、助け舟を出した。
この手は、気が利いている一方、踏み込み過ぎて嫌われるかもしれない諸刃の剣だと思う。
「どうして…」
「あ、」
困る近藤。
「えっとー…」
「デザートの盛りつけ!」
笑顔で言う近藤。
「橘さん上手だからサ! そっち担当してよ!」
あきらは驚いた表情で近藤を見る。
突然だと、そりゃ驚くだろう。
これは果たして、あきらの踏み込んでよい部分だったのか?
少し顔を歪めるあきら。
これはちょっと、これまで見たことがないかもしれない。
「ありがとうございます…」
無言でその反応を受ける近藤。
後輩に知られたことが一番のショックなんだろうけど、そうやってショックを受けているあきら自身の内面を見透かされたことによる近藤に対する恥ずかしさというか、いたたまれなさも含まれているのだろうか。
ありがとうございます、という言葉とは裏腹に、あまり感謝の気持ちは見られない。
ショックのあまり余裕がないだけかも。
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あきらへの想いを自覚した近藤
「ハハ…」近藤は首の後ろに手をやってごまかすように力なく笑う。
無言で作業するあきらから視線を外す近藤。
(俺は、橘さんのことが好きなんだ…)
近藤は、どこか寂しそうに、口元に僅かな笑みを浮かべながら自らのあきらへの恋愛感情を自覚する。
ついにキタ!
っていうかいきなりキター!
ここ最近はこの二人は結構のんびりとした展開だったけど、ついに近藤が恋愛モードに突入したことでふたりの関係に変化が起きそう。
近藤が自覚する前からあきらのことは好きだったんだろうけど、それが近藤の内でついに顕在化してしまった。
「すっごい雷~~」
窓際の席に座っているあきらの後輩たちは降りしきる雨を見つめている。
雨脚は強い。
その音はキッチンで背中合わせになっているあきらと近藤の間に響いていた。
今後のあきらと近藤の間に起きるであろう未来を暗示するかのような激しい雷雨。
相変わらずの眉月じゅん先生の詩的表現に舌鼓ですわ~(笑)。
ここまで読んできたからには、次からの展開は見過ごせないだろ!
恋愛感情を自覚した近藤の表情が浮かない様子は、近藤が社会人としてしっかりとしていることを意味しているが、それはつまりこれが無邪気な恋物語にならないことを示しているといえる。
決して幸せな結果にはならないような気がして怖いわぁ。
相性は良いと思うんだけど歳の差と、何より社会の目が敵よね……。
一体、近藤はこの恋にどう折り合いをつけていくのだろう。
先が気になり過ぎる~。
以上、恋は雨上がりのように56話のネタバレ感想と考察でした。
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